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Diversity

2021年11月1日

アンコンシャスバイアスを、
どうマネジメントしていくか

(一社)アンコンシャスバイアス研究所 代表理事
(株)モリヤコンサルティング 代表取締役
守屋 智敬 氏

私たちは、日常の中で「普通○○だ」「そういう場合は△△というものだろう」などの言葉を何気なく使っていないだろうか。
これらは、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)かもしれない。
アンコンシャスバイアスは、多様な価値観を否定し、アイディアの芽を育てられないなどの機会損失につながっているかもしれないものだ。周囲だけでなく本人の可能性を閉ざしてしまうこともあるかもしれない。
しかし、本人はそれを疑うべきものとは思ってもいない場合も多い。良識だと思っている場合すらある。これに組織・人材開発はどう対処していけばよいのか。(一社)アンコンシャスバイアス研究所 代表理事の守屋智敬氏にお話を伺った。

今、この瞬間にも、自分の思い込みが「負の影響」を与えているかもしれない


私が本当にアンコンシャスバイアスの影響の大きさに気づいたのは、2018年にがんサバイバーや、そのご家族・上司を対象に「がんのアンコンシャスバイアスに気づく」と題したワークショップに登壇した際です。

がんに罹患した人に対して、善意から「仕事のことは忘れて、治療に専念してね」といったり、この仕事はきっと続けられないだろうと、異動や休職をすすめるといったことを考える人もいるかもしれません。現に私も、母ががんに罹患したときに「もう仕事は辞めるしかない」との思い込みから、母を傷つけてしまったことがあります。しかし私の母は、がんに罹患してもイキイキと仕事に邁進していました。そんな私の経験やアンコンシャスバイアスの概念を説明し、その後に「自分ががんと宣告された当時のこと」「仕事をめぐる自分や上司、周囲とのコミュニケーションで感じたこと」をテーマにディスカッションをしてもらったところ、「無意識の思い込みが自分や周囲に対してあったと思う」「それにとらわれていたことに気づいた」といった反応をいただいたのです。

アンコンシャスバイアスは、組織マネジメントや女性活躍推進のための課題と限定的に受け取られていることもありますが、それだけでなく、もっと幅広く社会のあらゆる場面で影響し、相手を傷つけたり、自分の可能性を奪っていることがあるかもしれないものなのです。

まずは知ること、気づくことが必要だと理解するところから


しかし無意識であるがゆえに、自分で自分の思い込みに気づくことは難しいものです。「私は注意しているから、それほど思い込みはもっていない」と感じている人もいるかもしれませんが、アンコンシャスバイアスは日常に溢れていて、誰にでもあるものです。

例えば「親が単身赴任中」と聞くと、父親を想像するという人は多くいます(母親を想像しない)。そのことを指摘されると「実際に、男親が単身赴任するケースが多いのに、そう考えることの何が問題なのか?」と思う人もいるかもしれません。しかしそれは、「母親が単身赴任をするはずがない/母親は家にいて、子育てをするもの」という思い込みが背景にあるのかもしれません。そんな無意識の思い込みによって、「性別によって任せる仕事に偏り」を生じさせてしまったり、「本人の長期的なキャリア形成」に影響を及ぼすこともあるかもしれません。まず、アンコンシャスバイアスは誰にでもあること、それによって様々な影響を及ぼしているかもしれないことに気づくことが大切です。

私がこのテーマで研修を行う際には、先ほどのような問い、例えば「親が単身赴任中と聞くと誰を思い浮かべるか?」「部下ががんになったら、どんな声をかけるか?」などを問いかけ、受講者にまず自分はどう考えたかを書き出してもらいます。次に、その考えがどんな影響を及ぼしているかを考えてもらいます。

自分だけで考えるのではなく、周囲の参加者と対話をしてもらうことも大切にしています。例えば「まずは、治療に専念してね」といわれてホッとする人もいれば、戦力外通告をうけたように感じてショックだという人もいます。「真面目ですね」といわれてうれしく感じる人もいれば、そうでない人もいる。人の感じ方は千差万別です。これをテキスト上で知るのではなく、対話の中で体感することが重要だからです。

自分のアンコンシャスバイアスが、まわりに負の影響を及ぼしているかもしれないことに気づくと、「アンコンシャスバイアスに気をつけたい」と考えるようになります。そこが全てのスタートです。

「これって私のアンコンかな?」を社内の共通語にしよう


組織の中でありがちなのは、上司からメンバーへの頭ごなしに決めつけた発言です。「これがいつものやり方だ」「あなたは〇〇だ」などの発言には、アンコンシャスバイアスが潜んでいるかもしれません。仕事を進めるために「決める」ことは必要なものですが、「はじめから、決めつける」こととは別物です。大切なことは、気づこうという努力をしているかどうかです。

「表情が曇った」「急に無口になった」など、相手の表情や態度の変化、自分がイライラしてしまうなどの感情の変化は、アンコンシャスバイアスに気づくサインです。「ごめん!今のアンコンだった?」などといった対話につなげていくことが有効です。
(アンコン=アンコンシャスバイアスの略)

また、アンコンシャスバイアスは自分自身に対するものもあります。例えば、「上司のいうことに間違いはないだろう」と考えているかもしれませんし、上司と異なる意見をいうことに積極的になれない場合もあるでしょう。「私には無理」など、一歩踏み出せずにいる場合にも、アンコンシャスバイアスが影響しているかもしれません。ぜひ「これって私のアンコンかな?」を合言葉にして、向き合ってみてください。

気づきを共有し、変化を継続させよう


アンコンシャスバイアスに気をつけようというモチベーションがあがっても、それが一時的でいつのまにか元に戻ってしまうこともあるかもしれません。

その対策として、私がアンコンシャスバイアス研修をする際にお願いしているのは、これから1週間、自分が気づいたアンコンシャスバイアスをメモすることです。そして1週間後に事務局の方に、受講者が気づいたことや、アンコンシャスバイアスを意識するようになって変わったことなどを集めるアンケートを行っていただき、それをまた受講者同士で共有することをすすめています。

その結果、社内の対人関係のことだけではなく「このお客様にはこの提案しか無理だろうと思っていたが、それが思い込みだった(大きな提案につながった)」と、営業活動に役立ったというお話も聞きましたし、事務局の方から「あの〇〇さんが変わった!あの人は変わらないと思っていたのは、まさに私のアンコンでした」といった驚き交じりの報告をいただいたこともあります。

またある企業では、全役員・管理職にアンコンシャスバイアス研修をうけていただき、その2週間後に、社長が気づいたアンコンシャスバイアスをテーマに対談し、気づきや変化を社内に発信するオンラインイベントを行ったこともあります。これにも手ごたえを感じました。月に一度くらい、手軽なコミュニケーションツールを使って、「お客様に対してのアンコンを探そう!」などとテーマを変えながらのミニワークショップをやってみるものよいかもしれません。よい効果があることがわかればモチベーションがあがりますし、そんな機会が頻繁にあれば続きます。

きっかけがあれば人は変わります。組織も変わることができます。一人ひとりがイキイキとするために、ぜひ取り組んでみませんか。

(一社)アンコンシャスバイアス研究所 代表理事
(株)モリヤコンサルティング 代表取締役

守屋 智敬 氏

神戸大学大学院修士課程修了後、都市計画事務所、コンサルティング会社を経て、2015年、(株)モリヤコンサルティングを設立。管理職や経営層を中心としたリーダー育成に携わる。2018年、ひとりひとりがイキイキする社会を目指し、(一社)アンコンシャスバイアス研究所を設立、代表理事に就任。アンコンシャスバイアス研修の受講者はこれまでに5万人をこえる。2021年より、小・中学生にむけての授業もスタート。著書に、『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』(かんき出版、2019)、『導く力』(KADOKAWA、2016)、他がある。

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