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人材のトランスフォーメーションに効く「場」をつくる

人材のトランスフォーメーションとは、人材の内面の変容のこと

多くの企業が新規事業に力を入れる中で盛んに取り組んでいることの1つに、新規事業提案制度があります。そこで新たなアイディアが出ないわけではないといいます。しかし、「講評して終わってしまった」「Go/No Goの意思決定が不明確でやや形骸化している」という声を、人事や経営者の方からよくお聞きします。また、R&D部門への嘆きをお聞きすることもあります。「研究は非常に熱心に行っているが、それをどんなビジネスにしたいかという意志が感じられない」というのです。

これらは、示唆的なエピソードです。皆、真面目に努力をしていることは間違いがありません。しかし誤解を恐れずにいえば、アイディアを出せと指示されたから考える、役割を与えられたからそれに沿って行動するという表面的な行動になってしまっている感が否めません。だからそこに、ゼロから物事を動かすようなエネルギーが生まれないのです。

これは、人材や組織の外面的な要因、例えばスキルやプロセスを変更すればいいという問題ではなく、モノの捉え方や考え方といった人の内面の問題です。人の内面の変容こそが、今、取り組むべき人材のトランスフォーメーションなのです。

「場」をつくっていくしかない

しかし、「こんな風に考えなさい」と指示しても、「こう考えないからダメなんだ」と諭しても、それだけで人の内面を変えることはできません。その人自身が「そうしたい」と思わないとだめなのです。では人の内面に働きかけるために、私たちができることは何でしょうか。

それは人の内面に働きかけるような「場」をつくることしか、ないのではないでしょうか。

これは、今まで使っていた言葉でいうと「組織風土の変革」になるのかもしれません。そういうと、時間もかかる大掛かりな取り組みが必要だと身構えてしまうかもしれません。しかし大きな取り組みではなく、人の内面の変容に効く小さな「場」を数多くつくっていくことは、すぐにできます。

ここでは、そんな「場」づくりの切り口とポイントをご提案させていただきます。

1.「Will」を問うアウトプットの「場」

ビジネスのプレゼンテーションを行う際には、「What-Why-How」のつながりで説明をするのが基本です。しかし、物事をゼロから動かすエネルギーは人の内面から生まれると考えるのであれば、新規事業提案などの「場」においては、「What」の前に「Will」がある、と考えるべきです。したがって新たな提案の場では、「Will-What-Why-How」と説明することをルールにします。そうすれば、Will(意思)が曖昧なまま提案がなされることを避けられるでしょう。

もちろん提案を受ける側も、評価した提案に対して、自分の責任でアクションを起こすことを約束した「場」になっていることが必要条件です。そうでないと、「講評して終わってしまう」という状況は変わらないからです。また、ルールを変えたというだけでは、プレゼンテーションの内容がそのルールに形だけ合わせたものになるだけかもしれません。「この行動の背景にあるWillは何か」などと聞かれても、正直にいえば「今まで考えたこともなかった」という人がほとんどだからです。その部分への働きかけも必要です。

Willに働きかけるには、強い志で道を拓いてきた方の講演を聴くことも有効ですが、私はそれ以上に、深い対話ができる「場」をつくることが大切だと考えています。そこで自分の意志だと思い込んでいたものが、実はそれは周囲からの期待だったり役割責任から生まれているものであったと認識させ、自分の想いを開放させるのです。自分の想いの開放といっても、自分勝手な欲望を開放するわけではありません。自分の意思で考えて、あるべき姿や世界観(世界はもっとこうしたらより良くなるはずという自分なりの考え)を捉え、それに向けて動くのが正しいのだという気持ちを開放するのです。

やり方は例えば、まず自分の仕事を説明してもらいます。「〇〇会社の営業をしています」だけではもちろんNGで、お客様は誰で、どんな価値を提供しているのか。さらに行っている事業が社会にとってどんな存在理由があるのか、この事業がなくなって本当に困る人はいるのか、と考えていきます。そしてあるべき姿が描けたら、今はどこが理想と離れているのか、それはなぜか、などと対話をしていくのです。

2.多様であることが普通の「場」

私的な話で恐縮ですが、家族が心理カウンセリングを受けた際に、あくまでも患者としてこちらを捉え、起きている現象の原因を探ろうとするカウンセラーの姿勢にむしろ心が傷ついてしまった、という経験をしました。その後、家族会に参加して、参加者が経験をただ語り、ただそれを聴く。それだけの場がこんなにも癒されるものかということを体感しました。自分はここにいていいのだと思えると、もっと自分を表現したい、さらにはこの場の人たちにもっと貢献しようという気持ちが自然に湧いてくるものです。これはビジネスの場でも一緒ではないでしょうか。

一般に日本人はハイコンテクスト文化ですし、価値観や考え方が近い人が組織の大半を占めます。そんな組織の中では、自分の意見を口に出すことすら、安全安心ではないかもしれません。新しいアイディアは、登場した当初は常にマイノリティですから、新しい動きは今の職場からは生まれないということでもあります。この状況を解決できるのは、絶対的なマジョリティ集団があり、 その意見がそのまま全体の価値観になるような状況を変えていくということだけです。言い換えれば、多様な価値観があることが普通である「場」をつくっていくしかありません。そのために、できることはどんどん始めるべきです。

例えば、副業や越境で仕事をした経験をもつ人を、組織の中に一気に増やすような施策を行えないでしょうか。あるいは、周囲に影響力のあるリーダークラスの人材にこそ社外で武者修行経験をさせたり、積極的に他のメンバーのメンタリングに関わらせることなどもすぐにできそうです。

それでも既存の意思決定構造を保ったままでは、大きな変化は起きないかもしれません。いずれは既存の組織構造に手をつけることを考えなければなりません。しかし、多様であることが普通な「場」となっていれば、その変更もスムーズなはずです。

3.会社を離れた自分の価値を考える「場」

人が自分の考え方や行動を変えるとき、自分の思考のクセや無意識に前提にしてしまっていたことを自覚することが大切です。それができる「場」であるキャリア研修の重要性が今後増してくると考えています。

私も最近、キャリアについて話をする機会が増えていますが、その際の私のメインメッセージは、「脱会社員」です。これは決して転職を促しているわけではありません。周囲や上司の評価に囚われず、自分で自分の市場価値を世の中に問い、高める行動を起こしていこうという意味です。

そして人材の市場価値を決める要素には、胆力や倫理観、人脈、内省ができる人材かどうかなど様々なものがありますが、これらを抽出し、3つの領域11の要素に整理したものを「キャリア資産」と呼び、自分で自分の市場価値を高めるための手掛かりとして提案しています。

「資産」と呼んでいるのは、意識して貯めたり運用したりすることができるものだと思うからです。自分がもっている強い1つの資産を元手にして、別の資産を得るように動く。例えば、ある領域の深い知識を活かして人脈を広げたり、思い切った経験を積むことで胆力を増やすことができるはずです。「この仕事を通して、このキャリア資産を増やそう」という目標をもって取り組むことができれば、その人自身の市場価値は確実に上がり、ひいてはそれが企業と個人が対等な関係性になっていくことにつながっていくはずです。

「場」が生まれ続けることが、最強の競争力になる

ここでいくつかご紹介したように、人材のトランスフォーメーションに効く「場」とは、大掛かりな取り組みである必要はありません。そのかわり、最初のきっかけづくりや下地づくりは人材開発部門が行うとしても、社内のいろいろな部門がそんな「場」をつくることを目指すべきでしょう。すべての取り組みに、確かな手応えがあるわけではないかもしれません。しかしそうした「場」をつくり続けることによって、「これをやりたい」という声が意外なところからあがったり、なぜかどんどんタレントが出てくる、そんな組織になっていくのだと思います。その状態はきっと外部からみれば、「特別な施策を行っているわけではないのに、なぜだろう」と思われるでしょう。だからこそ他社がマネできない、最強の競争力になるように思います。

株式会社セルム 代表取締役社長
加島禎二

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