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理想を描く、宣言する、透明性高く情報を共有する

 

KDDI株式会社

執行役員 コーポレート統括本部 人事本部長 白岩 徹氏

コーポレート統括本部 人事本部 人財開発部長 千葉 華久子氏

今、新型コロナウイルスの感染拡大という事態に対し、全ての企業が否応なくその対応に迫られている。この今をどう過ごすか、それが数年後には目に見える違いとなって表れてくる、そんな時なのではないだろうか。

KDDI株式会社では、今をめざす姿への変革を進める機会であるととらえ、様々な変革施策を一気に実行している。

めざす姿とは、新しいビジネスモデルといったものではなく、この先全ての土台となる「組織や人財のあり方」のことだという。

その具体的な取り組みと、そこに込められた想いについて、執行役員・コーポレート統括本部人事本部長であり、人事領域の変革の実行責任者である白岩徹氏、人財開発部長の千葉華久子氏にお話を伺った。

「働き方改革」は、次の段階へ

加島 この新型コロナウイルスの感染拡大は、次世代社会への転換点になるかもしれません。KDDI様では、これまでどのような動きがありましたか。

白岩 KDDIでは2月頃から海外渡航の原則禁止とテレワークの推奨を始め、緊急事態宣言下の4・5月には、一気に9割以上の業務をテレワークとしました。

実はそれ以前から、働き方改革の一環としてテレワークの推進に取り組んでいたのですが、劇的には変わっていないという自覚がありました。「議論は対面で行わなければ深まらない」「この仕事はテレワークでは無理」などの言葉に、それ以上踏み込むことが難しかったのです。ところが、4月からはほとんど全てをテレワークに切り替えて業務を行えています。あれほど難しいと感じていたハードルを、一気に飛び越えてしまったのです。

「できるかどうか」という意味では、できることがすぐにわかりました。CanʼtかCanかでいえば、Canです。ところが、4月の半ばくらいから、皆、なんとなく不安を感じ始めました。

今までも1人で仕事を進める場合はありましたし、メンバーや上司の声を1日中聞かないという日もありました。ですが、今まで通りのやり方が前提になっているというだけで、安心感があったのだと思いました。何よりテレワークは目的ではなく、目的は生産性の向上です。この状況に、ある程度は指針を示す必要があるでしょう。

「KDDI 新働き方宣言」

白岩 そこで、5月の連休明けから、私を含む人事・総務の各本部長、経営戦略本部、情報システム本部、ソリューション推進本部の本部長が集まって、あるべきKDDIの姿やこれからの働き方について、喧々諤々の意見交換をしました。5月中は週に1回か2回の頻度で、オンラインで夜の時間帯に行いました。気がつくと1回あたり大体3時間くらいを費やしていました。

自分たちがいつかリタイアした時に、「あぁ、いい会社で働いた」と思いたい。そのためにはやはり変革を受け入れなければいけない。今がそれを実現できる時だろう。では、その変革とは何が変わることなのか。会社だけではなく社員も変わらないといけない。具体的には何をするのか。と意見が収斂されていきました。その内容を、「KDDI 新働き方宣言」としてまとめ、6月3日に社長の髙橋誠から全社にむけて発信しました。

髙橋からのメインメッセージは、「それぞれに最適な働き方をデザインし、変わっていこう」ということです。会社は変わる。皆も変わってほしい。そして皆が誇れるKDDIをつくっていこう、ということを伝えました。その上で、各担当本部長から、システムやオフィス環境、人事制度やそれに伴う仕組みの構築などの課題を具体的に上げ、今から順次着手することと完了見込みを宣言しました。

また、社員に求める意識と行動の変革を具体的にイメージしてもらうために、Runner(外勤中心)、Walker(社内外打合せが多い)、Sitter(オフィスワーク中心)、Manager(組織のリーダー)の4タイプに分けて、在宅勤務や出社、自己啓発のあり方といった「新しい働き方のモデルケース」も提示しました。

加島 最初に宣言するのは経営にとっては勇気の要ることですが、とても誠実な行動に思えます。

対話の機会を幾重にもつくる

白岩 ただ、経営層が宣言すれば変わるというものではありません。また、「全ての人が納得する人事施策というのものはない。人事は70点で合格だ」などという言葉もありますが、70%でよしとするつもりはありません。対話をしないとそこで終わってしまいます。ですから、あの手この手を使って対話の機会をつくっています。

まず事業本部ごとに、本部長と人事責任者に対して90分の時間をとり、改めて新人事制度の説明とディスカッションを始めました。

非管理職などに対しては、10月から「ワクワクツアー」の中で行います。「ワクワクツアー」とは、社長の髙橋が就任した年から行っている対話会のことで、海外も含めて各地に出向き、様々な世代や階層の生の声を直接聞くというものです。今年はこの中で、新しい働き方とそれを実現する新人事制度に関する対話も行っていきます。

また、それらに先立って「タウンホールミーティング」を6月29日に行いました。

「タウンホールミーティング」とは、「ワクワクツアー」ではどうしても人数が絞られてしまうという課題をカバーするために、もともと今年から行う予定で企画していたもので、オンラインで1,000名の社員を視聴者として行うライブイベントです。その第1回目を、新しい働き方をテーマとして行いました。1,000名という定員はシステム上の定員の最大値なのですが、今回はそれでも申し込みが定員を大幅にオーバーし、抽選となりました。

内容は2部構成で、第1部は社長の髙橋とコーポレート統括本部長であり副社長の村本の2人の対談。第二部は、人事では私、情報システム本部とソリューション推進本部の本部長の3名が、それぞれが推進する変革の内容とコミットメントを表明し、そのあとに髙橋と村本も交えて5名で意見交換をしました。その様子を生配信したのです。

加島 経営層のディスカッションを公開するようなイメージですね。

白岩 話している内容に対してオンライン上でどんどん質問が飛んできます。誰かが投稿した質問に視聴者が「いいね」をつけられる仕組みを採用しましたから、皆が知りたい質問が上位に表示されていきます。それを見てその場で答えたり、ディスカッションをしたりもしました。緊張感がありました。

ジョブ型新人事制度の導

加島 人事本部で進める取り組みについて教えていただけますか。

白岩 実はこれらの多くは、新型コロナウイルスの感染拡大をうけてつくったものではなく、それ以前からKDDIをもう一段磨き上げるために必要だと考え、順次実行し始めていたものです。

●評価軸の変更

まず、評価軸を「パフォーマンス」と「チャレンジ」という2つの軸に変えました。もともと旧来の日本社会の評価慣行は問題が多いと考えていました。働いた時間の長さで頑張っているとみられたり、上司との親密度も少なからず評価に影響していたのではないかと思います。

しかしこれは、長い間に染みついてしまったやり方でもありました。そこに新型コロナウイルスの感染拡大があり、目の前に部下がいないことが多い環境の中で評価を行うとなると、ジョブの成果を評価するパフォーマンス評価しかないのです。

そしてもう1つの軸として、360度評価を導入予定です。まずは管理職からスタートします。

●ジョブ型の働き方とチャレンジを促す仕組みの充実

社内の仕組みや制度も、順次パフォーマンス評価、つまりジョブ型の働き方とチャレンジを促すものを充実させ、切り替えていく予定です。

〈ジョブ型採用〉

2019年度から新卒採用においても「ジョブ型採用」といわれるWILLコース採用を開始しました。職務内容を明確化し、本人の意思(Will)を尊重する採用方式で、採用してから配属を決めるのではなく、採用する時には既に配属先が決まっています。導入2年目で4割と、半数近くがWILLコース採用でした。2021年度からは、一律の初任給を撤廃する予定です。

中途採用も拡大していますが、中途採用はそもそもジョブ型の採用です。彼らは最初からパフォーマンス評価になじむはずです。

〈社内副業制度〉

本人の意思を活かし、チャレンジを促す施策の1つとして、手上げの「社内副業制度」を4月からスタートしました。社内副業は業務内容と役割を明示して募集をかけます。業務の20%のパワーを使ってOKで、期間は基本6か月です。例えば人事に来た副業者の1人は、採用HPの改定を手伝ってもらっています。イベントの企画や運営に携わってもらっている人もいます。

現在は人事を介して社内副業を募集・面接をしていますが、やりたい仕事があったら人事を介さずに担当部署と相談できる仕組みが必要だろうと考え、今、システムを構築中です。

ところで、副業を社内で行うとしたのは、労働時間管理のためです。労働時間管理ができることを条件として、次の構想としては関連会社、その次はリレーションのある社外の企業に広げていければ面白いと思っています。

加島 社内副業は社内の事業の垣根をなくすことにもつながりそうに思います。また、通信はこれからいろいろな産業に必要になるはずですから、社外での副業が技術やニーズの掛け算を生んで、イノベーションにもつながる可能性も感じます。

白岩 夢は広がります。副業というと、本業がおろそかになるのではないかという意見もありますが、私の感覚では、バランスよく副業をすると、両方のパフォーマンスが上がるように感じています。まずは、そんな状態を広げていきたいと思います。

〈エルダー公募〉

一方で、KDDIの社員のボリュームゾーンは50代社員です。KDDIでは50歳以上の層をシニアとは呼ばずエルダーと呼んでおり、エルダーの活性化を目的に、エルダーに特化した手上げ式制度を作りました。それが「エルダー公募」です。

仕事の中には、例えば体力が必要等の理由で若手に向いていると思われる仕事と、経験や仕事人生への共感が求められるエルダーに向いていると思われる仕事があります。KDDIでは事業部ごとにそんな仕事を整理しており、手薄なエルダー向けの業務については公募をかけ、自分の意思で選べるようにしています。公募は年に複数回あり、こちらは副業ではなく異動です。

●目標管理シートの廃止

そして、目標管理シートを廃止しました。期初に細かく目標を書き込んでも、半年や1年が経つうちに世の中の状況もずいぶん変わり、期初に設定した目標との比較が現実的でない場合もあります。もっと有効な目標管理のやり方があるのではないかと考えたのです。

そこで目標管理シートに代わり、マネジャーと部下が日常的に行う1 on 1の中で目標のすり合わせをすることにしました。マネジャーにはそれだけの権限を与えます。1 on 1の中で決めた目標を管理するためのシステムを今構築中です。また、マネジャーがきちんと役割を果たせているかどうかは、360度評価でチェックできるようにと考えています。

実は「時間がない」ということが、チャレンジができない大きな理由の1つです。工数や作業のスマート化の動きは、チャレンジする時間を生み出していくためでもあります。

●全所属長・グループリーダー約2,300名に対する研修をスタート

千葉 働き方が変わって人事制度も変わる中でキーマンとなるのは、メンバーと日々接するマネジャー層、つまりグループリーダーとその上長である部長層です。ここが旧来のマインドセットで旧来のマネジメントをしていては、結局何も変わらないことになります。私自身の実感としても、オンラインでは指示もより明確に、よりグレーゾーンをなくすことが求められることを感じます。マネジャーの意識とともにスキルアップも必要です。

そこで、グループリーダー・部長層約2,300名に対しての研修を7月の第1週目からスタートしています。テーマは、第1回目が新評価制度の理解、2回目が1 on 1でのコミュニケーションの取り方、ここまではオンライン研修で行います。その後、新型コロナウイルスの状況をみながらとなりますが、ここKDDIの研修施設「LINK FOREST」で実地の研修を実施していく予定です。

また、リーダー人財のパイプラインを充実させるために、これも7月から若手の選抜研修である「経営塾ジュニア」もスタートさせました。1回20名で今期は2回開催する予定です。

●自己啓発の支援

「新働き方宣言」の中で、通勤時間などテレワークになったことで浮く時間を自己啓発につかってほしい、ということもメッセージしています。しかし、メッセージしただけで皆がその方向に動くというものではないと思います。そこで、様々な自己啓発の機会を、人財開発部から発信していきます。

実は2年前からKDDIでは社員に対し、「エキスパート職」の認定を始めています。彼らにはスキルや技術の伝承、人財育成を担ってもらうことを求めています。そこでオンライン、或いは「LINK FOREST」を使って彼らの講座をつくることも計画しています。

もちろん英会話など、一般的な自己啓発テーマも充実させていきます。

力を尽くせることは喜びである

加島 新型コロナウイルスの感染拡大が起こる前から、組織・人財開発の理想を描いて動いていたからこそ、今回の変革につながっていることを強く感じました。最後に、あえての質問をさせてください。事業が好調であるKDDI様が、ここまで本気で変革を考えていたのはなぜなのでしょうか。

白岩 通信業界は好調だといわれているのは、おそらく正しいのですが、KDDIの売上の8割はコンシューマ事業です。日本の人口減少は確実ですから、明らかにシュリンク市場に主力をおいています。事業構造を変えなければ生き残っていけないという危機感が、まずあります。

その状況を動かすには、チャレンジングな人財を育てるしかありませんし、組織にもそれを受け入れる能力がなければいけません。今、社長の髙橋もそう考えていて、人事・人財開発が力を発揮すべき領域が変革のメイン課題になっています。それを非常に意気に感じています。またこれは今、全社員が気がかりなテーマでもあります。その責任も強く感じていますし、必ず成果を出したいと思います。

今、社内の施策や動き全ての判断の指針であり、最も重視する考え方は「自律と責任」です。ここには厳しさもあります。しかし、「自律と責任」の状態は公平なことですし、喜びも必ずそこにあります。間違いなくKDDIはそれによって強くなると思っています。

加島 透明性高く情報公開することが、極めて重要な「変われる力」なのだと感じました。本日はありがとうございました。

 

Interviewer/株式会社セルム 代表取締役社長 加島 禎二
2020年7月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

 

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