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SDGs2

SDGsに向かって動き出す人材を育成する施策とは

SDGsの進展を阻むのは自己効力感の低さ

これまでも、企業は様々な変革に取り組んできました。しかし頭では理解できても、人の心の動き方として、目の前の安定や利益、これまでの仕組みの維持が大切で、あえて不確実なことに取り組むモチベーションをもつことは難しいということが、新しい行動を阻む壁になってきました。SDGsへの取り組みにも同じ構造があるように思います。

「人はなぜ変革に前向きになれないのか」という課題に対する仮説の1つは「内発的な動機ではなく、外からの圧力や、上位者から指示されたものだから」というものでした。皆、真面目に精一杯取り組むのですが、現状突破するだけのエネルギーには至らない、だから本人の内発的な動機や志を醸成することが大切だと考えました。このこと自体は、間違いではないでしょう。

しかし人が自分がやりたいことを見つけたり、志をもったりすることは簡単なことではありません。また、人は1人ひとり多様です。ですが、人が目的や周囲のために動くパワーが出せない時には共通点があるように思います。自己効力感、自己肯定感が低いときです。自分の能力や可能性を信じられないと、人は「守り」に入ります。

今、企業の中には、ともすると自己効力感、自己肯定感を失わせるような構造ができてしまっています。企業は組織の集合体です。組織は、機能や役割分担をして効率的に動けるように設計されているのですが、組織がそれぞれの役割に最適化すると、それが組織の内部を守る壁になり、最適化された以外の行動を阻害するパワーになります。一方で社会は変わりつつあります。経営層からも度々変化を求められます。組織のメンバー自身も今のままのやり方では未来が見えないと感じても、組織の壁や、自身の責任感の壁に阻まれて、踏み出すことができない。これが、自己効力感、自己肯定感を低くする構造でしょう。

ここは、組織・人材マネジメントが、力を発揮すべき領域です。組織・人材マネジメントの領域でも、これまでとは異なる発想で課題設定し、取り組み方を変えていくべきです。

企業内教育に必要なイノベーションは企業外とつながる仕組み

かつてはヒトやモノ、情報といったリソースを企業が囲い込むことで競争優位性をつくっていましたが、今はもうそのやり方は限界を迎え、オープンイノベーションを取り入れることが当たり前になりました。また、終身雇用、年功序列といったこれまでの仕組みも維持できなくなるでしょう。

そんな状況の中で1人ひとりの個人が求めるのは、社外でも通用する実力をつけることです。社外でも通用する人材のことを私は「プロ人材」と呼んでいます。社外でも通用する実力をつけるなら、キャリア構築も個人の責任で取り組むべきだという、「キャリア自律」の議論もあります。しかし、企業としても「プロ人材」を必要としています。さらにいえば、「プロ人材」でありながら自社で働く理由をもち、結果を残そうと努力する人材が、企業が最も欲する人材です。そんな人材開発を行っていくのが、今の企業の目標でしょう。

「キャリア自律」というと、研修メニューを並べて個人が自由に選べるカフェテリア方式がすぐに考えられますが、この方式を採用すれば「キャリア自律」が進むというほど簡単なことではないと思います。また「プロ人材」となるためということでは、大学を始め、多くの外部機関の講座がありますが、それだけでは企業としての意思を反映させた人材開発とはならない場合が多いでしょう。

ではどうしていくか。考えるべきは、これまで社内だけで考えてきたタレントマネジメントを、社外とつなげていく仕組みではないでしょうか。

1つのアイディアではありますが、私は異なる立場にある複数の企業がアライアンスして企業内大学を運営する「コーポレートユニバーシティ・アライアンス」という構想をもっています。複数企業が共同で「サテライトキャンパス」を設立するようなイメージで、この中で、地球や社会の課題を題材に、「自社は何ができるか」ではなく、「目的は何か」「どうしたら解決できるのか」「一緒にできないか」と、思考や視野を広げていくセッションを常時開催し、多くの社員が自分のタイミングで参加できるようにするのです。

自分の会社やビジネスを客観的に見ることができるようにもなり、社内の常識を超えた発想やアイディアをもつきっかけになるでしょう。そんなアイディアを1人ひとりがもつことができれば、それが自己効力感や自己肯定感になり、意識変革にもつながるはずです。

社内だけに向けてきた教育投資を数社の同盟関係によって外に広げていくのは、今後のビジネスのあり方を考えてもそれほど突飛なことではないのではないでしょうか。

ミドルマネジャーの新しい自己効力感をつくる

メンバーの自己効力感や自己肯定感を育成の場で育んでも、日々の業務の中でミドルマネジャーがそれを潰してしまうこともあります。ミドルマネジャーが旧来の理解・認知の範囲内でしか意思決定をしない、評価をしないとなったら、メンバーは口をつぐみ自己効力感を下げてしまうでしょう。実際、私が変革プロジェクトをお手伝いした企業でも、ミドルマネジャーが変革を阻害しているケースが多くありました。

しかし、人の集団には指示を出したり評価をしたりする存在が必要であり、その役割を担うミドルマネジャーは現場の要です。ミドルマネジャーに向かって、「君たちがダメなんだ」と否定しても、何も前進がありません。メンバーもミドルマネジャーのスポンサーシップなしに変革行動が起こせるほど、強い個人は多くありません。ですからミドルマネジャーには、変革のスポンサーになってもらわなければなりません。

私は、この課題に対しては2つのアプローチがあると思います。

1つは、ミドルマネジャーを抜いた若手と事業部長クラスの経営層だけで、5〜10年後の未来の現事業の姿と、そこに向けてのシナリオを検討する場をつくることです。ミドルマネジャーが抜けて議論をすることは、足元の目標達成の意識から離れた、未来志向・社会志向の発想を生まれやすくします。そうした場で出された発想をミドルマネジャーに提言し、変革のスポンサーとしての行動を「要請」するのです。

その上で、具体的にミドルマネジャーに求める行動は3つあります。まず、「①やめられる仕事を見つけ、”これはやめる“と宣言すること」。これによってメンバーは安心して不要と思っていた仕事をやめ、新しい取り組みにより力を割けるでしょう。そして、メンバー周囲や他部署から理解を得られるように、「②メンバーの取り組みを発信すること」。そして、「③特定のメンバーに新しい役割を与えること」。これらによって、職場全体に「変えていこう」「本気なんだ」という空気が生まれていきます。

2つめは、ミドルマネジャーに定期的に集まってもらい、エンパワーする仕組みをつくることです。誰しも変革行動に取り組むと、様々な壁にぶつかります。自分の意識の壁、能力の壁、さらに、変革は他部署との協力が必要になるため、組織の壁にもぶつかります。壁にぶつかると誰でも気持ちが落ち込みます。そんな気持ちを立て直し、対策を立てて再び勇気をもって変革行動に立ち向かえるようになるために、定期的に「ピットイン(※)」のようなことができる場をつくっておくことで、日々の業務を守ることにではなく、変革を促進することに自己効力感をもつミドルマネジャーを育てていくことができるのではないでしょうか。

経営理念を深く掘り、社会に誇りと信頼感を醸成する

第4次産業革命といわれるほどの変化を前にしていても、今、私たちの多くは「どこかにあるはずの正解を探す」ような姿勢から抜けきれないでいます。そんな姿勢から抜け出すために、働く皆の自己効力感・自己肯定感を高めることが必要だというお話を進めてきましたが、その際に最も拠り所とすべき大切なものは、やはりそれぞれの企業の中にあるのではないかと思っています。

もともと企業は、社会に必要なものを提供するからこそ存在していられます。創業者と創業メンバーはそれをよく理解していたからこそ、様々なイノベーションを生み出してきたことを私たちは知っています。今働いている私たちも、自分が属する企業や関わる事業への共感なしに働いているということはないはずです。企業が社会に何を提供するのかを明文化したものが企業理念です。そう考えると、企業理念の追求こそが、自社がこれからも存在し続けるための唯一の指針になるといっても過言ではないのではないでしょうか。

企業理念は必ず社会価値の提供に結びついています。皆で心を1つにしてその提供価値を見つめ、さらに高めていくことは、そこで働く皆の誇りにつながり、必ず企業への信頼感にもつながっていくはずです。個人と企業がSDGsへの意識を高め、持続的な社会づくりに貢献する動きを起こすためには、何より企業理念の追求が鍵を握っていると思います。

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