株式会社セルム(CELM)

(japanese)企業・学生・地域の垣根を超えて、新規事業開発を通じて自分自身も変化し、進化し続ける。

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(japanese)

 

 


株式会社セルム 執行役員 株式会社ファーストキャリア 代表取締役社長 瀬戸口 航
株式会社ファーストキャリア 辰巳 唯

ファーストキャリアはその名の通り、セルムグループのなかでも若手層の人材育成を担う会社。同社が新規事業として立ち上げた、企業・学生・地域のそれぞれのリーダーたちがチームを組んで難易度の高い地域の課題解決に取り組むプログラム「TEX」(True Experience)にはどのような想いや狙いがあるのでしょうか? 「育成」に全身全霊を注ぐセルム執行役員兼ファーストキャリア代表取締役の瀬戸口 航と「TEX」の専任として立ち上げから事業に携わる辰巳 唯に話を聞きました。時にジョークが飛び交う2人のフランクな掛け合いからは、立場や年齢の垣根を超えた同志としての深い絆、そして新たな人材育成の先に待つ、明るい未来を垣間見ることができました。


自分たちが体現しながら、最適解を見出す

── ファーストキャリアとはどのような会社なのでしょうか?

瀬戸口 航(以下、瀬戸口):ファーストキャリアは、若手人材や新入社員の育成支援および教育研修を担う会社です。例えばビジネスマナーや論理的思考、コミュニケーションについてなど、企業人としてこれから活躍していくための土台の底上げを行なっています。

 

── お二人がセルムグループに入社するまでの経緯と、いまのお仕事について教えていただけますか? 

瀬戸口:僕は大学卒業後、大手コンサルティング会社で新規事業開発支援やビジネスプロセスの構築などに従事してきました。5年ほど経って、次に何がしたいかを考えたとき、今度はもっと、人をハッピーにするような仕事がしたいと思ったんです。それまでは、目に見える「もの」を通じて世の中にムーブメントを起こそうと志していたのですが、結局は受け手の心次第なのだと気がつきました。結果、人の心を「育む」仕事に就きたいという想いが強くなり、原点回帰する形で人材の「育成」に携われる仕事を探したんです。そんなときに出会ったのがセルムグループでした。

自分たちでソリューションを持つことに固執するのではなく、多種多様な外部の専門家とネットワークを組むことで、顧客の課題からビジネスを組み立て、大企業の組織課題を真に解決していくというセルム独自のスタイルに可能性を感じました。そしてここで世の中に大きなインパクトを与える仕事をしたいという思いから門を叩きました。なかでもファーストキャリアは若手の「育成」に特化していましたので、紆余曲折を経た自分だからこそ、何か若手に伝えられるものがあるのではないかと考えたわけです。2010年のことでした。

辰巳 唯(以下、辰巳):私は新卒の1期生としてファーストキャリアに入社して、今年で10年目になります。「人」「教育」「成長」をキーワードに就職活動をしていたのですが、ファーストキャリアはセルムグループのなかでも、若手の人材育成に特化しているというところに魅力を感じました。入社当初はまだ10人ほどの組織で、新卒であってもすぐに一人前として扱ってくれたことが印象に残っています。いまも人材教育に対してとても熱意のあるメンバーが揃っていて刺激になりますし、上下の風通しも良く、働きやすいです。

瀬戸口:若手や新入社員であっても、その人ならではの価値観や、これまでに培ってきた経験や価値観を生かせるように意識していますから。僕らの会社は小さいながらも、社会における組織の縮図だと思うんです。組織の在るべき姿を自ら体現しながら、最適解を見つけていきたいと考えています。人の成長やキャリアというものを扱う仕事ですが、理論的に語れる部分だけではありません。当然、上手くいかないことも多いのですが、自分たち自身も成長を体感しながらお客様に提供するソリューションを更新していけるというのは、ある意味とても恵まれたことなのではないかと思っています。

 


世の中のニーズに合わせて、ソリューションをアップデート

──人材育成において求められる要素も時代と共に変わってきていると思いますが、ファーストキャリアではいまどのような取り組みをされているのでしょうか?

瀬戸口:これまで若手に必要なのは、主に「主体性」「礼儀」「コミュニケーション」と言われてきましたが、パンデミックを機に「リーダーシップ」の必要性がより声高に叫ばれるようになってきました。我々は研修という商材をメインにビジネスを展開してきましたが、講義を聞くだけの研修では、リーダーシップに必要な能力は伸ばせません。同時に発露・発表の場もセットしていかなければならないんですね。若手の人材が組織のなかで発揮できる価値の広がりに比例するように、我々の提供できるソリューションの幅も広がってきていると言えるでしょう。世の中のニーズに合わせて、常に研修の定義そのものをアップデートしています。

 

── では、若手の育成に携わる上でファーストキャリアが大事にしていることとは何でしょうか?

瀬戸口:若手に対してのビジネスをしている以上、自分たち自身も変化し、進化し続けなければなりません。「世の中を変えていく先駆者たれ」「失敗を恐れずに挑戦しろ」と伝えている我々自身が変化せずに過去の経験から得たことだけを語っているならば、若手に変化を求める資格はありません。

 

── 常に課題意識を持ち続けているのですね。モチベーションはどんなところに見出しているのでしょうか?

辰巳:私は入社後8年間、若手の育成という答えのない課題に対して、お客様と一緒に最適解を見つけていくことをモチベーションにしてきました。いまは新規事業である「TEX」(True Experience)を通して、社内の仲間や外部パートナーをはじめいろいろな人たちを巻き込みながら、新たな問いに向き合うことが楽しみでもあり、モチベーションにもなっています。お客様の課題に向き合いながらファーストキャリアの事業の価値をより高め、世の中にインパクトを与えられる取り組みをしていきたいと思っています。

 

 


「採用」と「育成」を一気通貫でデザインする

── そもそも新規事業である「TEX」は何をきっかけに、どのような目的でスタートしたのでしょうか?

辰巳:「TEX」(True Experience)とは、我々が新規事業として立ち上げた、企業・学生・地域のそれぞれのリーダーたちがチームを組んで難易度の高い地域の課題解決に取り組むプログラムです。

若手の育成・成長をデザインするヤングタレントマネジメントにおける、新たなソリューションを提供するべくスタートさせました。一般的に人材育成は「採用」と「育成」に分断されています。とりわけ大手企業では、人事部のなかでも採用部門と育成部門が分かれているんですね。しかし、入社してからの成長ストーリーを描いていく上で「採用」と「育成」の主人公は同じです。リーダー育成の必要性が叫ばれているいまの時代においては、リーダーになり得る人材を狙って採用し、育成していくことが大切だと感じてきました。そうしたなかで、「採用」から「育成」までを一気通貫でデザインできないかという考えから立ち上げられたのが「TEX」です。「TEX」は大学生をはじめとする学生にとっては、自分のキャリアについて考えるきっかけとなり、企業にとっては未来のリーダーをデザインしていく良い機会となります。

 

瀬戸口:ただ実際にスタートしてみると、そういった我々の狙いとお客様の反応には若干のズレがありました。そこからさまざまな変遷を辿りながら現在の形になったのですが、最近になってようやく、我々が当初狙っていたニーズに世の中が追いついてきたというような感覚があります。

── 「TEX」に取り組むなかで、具体的にどのような気づきや変化があったのでしょうか?

辰巳:「TEX」の1回目では、東日本大震災の被災地である岩手県陸前高田に学生と社会人を集め、3泊4日の研修を行いました。いくつかのグループに分かれて陸前高田の社会課題について考えるという内容です。終わった後、企業の方から「奇跡の一本松を見ながら、自社の採用や未来のリーダーについてなど考えられなかった。ただ、五感で感じたことを自身の価値観に照らし合わせ、自分にできることを考えるといった、自分自身を見つめ直す場としてはすごく刺激的で良い機会だった」とお声をいただいたんですね。我々としては「採用」と「育成」の一気通貫を狙っていましたが、結果的には育成の部分に大きな成果があったのです。

そこから、「HR(人的資源)」「人材育成」「リーダーシップ開発」に地方創生を掛け合わせた、いわゆる地域を舞台にした「リカレント教育」に舵を切り、さまざまな取り組みを行なってきました。

瀬戸口:「育成×採用」の仕掛けとして、地方を舞台に研修を実施した結果、採用は付加的な要素となり「地方創生×育成」に収斂されていったというわけです。「TEX」をきっかけに新卒の採用に繋がったケースもありますが、主目的ではなくなりました。

 

 


「学生×社会人×地域の人」三者のトライアングルが織りなす真実の体験

── 「TEX」は現在、どのような場として機能しているのでしょうか? 「TEX」に参加する意義についてお話いただけますか?

瀬戸口:「TEX」が大事にしているのは「学生×社会人×地域の人」のトライアングルです。年齢や立場は違っても、互いに影響を及ぼし合い学び合う。三者が同じ目線で語り合うという構図なんですね。ときには学生が社会人の背中を見て学び、またあるときには忖度のない意見を述べる学生から社会人が刺激を受ける。それぞれが真実の体験(True Experience)ができる場として機能しています。

社会人にとっては、自分の価値観や1人の人間としての影響力、そして自分の学ぶ力のようなものを目の当たりにして、新たなスタートを切れる機会となる。学生にとっては、世の中でどんなことをしていきたいのかを考える機会となるだけでなく、年上の大人たちにも影響を与えられるんだ、という成功体験になる。そして地域の人にとっては、自分たちの強みやリソースについて考える機会となる。僕らも含めて、変化したり進化する瞬間がそれぞれの人に生まれるという点が強みだと思っています。とはいえ「TEX」はあくまでも取っ掛かりに過ぎません。会社でも友人でも、いわゆるコミュニティでもなく、サードプレイス的な位置付けで細く長く繋がっていくといいなと思っています。

辰巳:「TEX」は、地域と触れ合える良いきっかけとなります。私自身、それまで地域と触れ合う機会がなく過ごしてきましたが、「TEX」のプログラムを通じて地域のコミュニティを知り、地域が抱える課題について考えるようになりました。世の中には面白い人たちがたくさんいて、たとえ離れていても同じ志をもってさえいれば、一緒に何かを成し遂げられるのだと実感しました。「TEX」での時間は、新たな刺激を受け、視野を広げるための稀有な機会になると思います。

 


「TEX」の越境学習が生み出すリーダーとともに地方創生の在り方を変える

── 「TEX」はこれからの社会において、どのような場面でどんな風に必要になってくるとお考えでしょうか? 今後のビジョンを含めてお話いただけますか?

瀬戸口:パンデミックに限らず、今後も世の中では思いがけないことが起きることでしょう。平時に効率的かつ効果的にマネジメントできることはもちろん、有事の際に自分の目で見て、自分の頭で考えて決断していけるということが、リーダーにとっては非常に大事な素養となります。そういったときに必要となるのは、世の中を見る力です。世の中には、自分だけでは気がつかない側面がたくさんあります。自分を取り巻くステークホルダーの環境や状況をきちんと捉えて行動できる人が集まれば、世の中を良い方向に動かしていくことができるのではないでしょうか。

 

辰巳:世の中では一見関連のないいろいろなことが繋がって、さまざまなことが起きています。しかし、そういうリアルな社会課題の構造に触れるのは、大抵は社会に出てからです。学生にとって「TEX」は、社会にはまだまだ自分たちの見えていない部分がたくさんあるのだということに気がつく良い機会になるのではないでしょうか。ある意味で閉ざされたコミュニティの中にいる学生が一歩前に踏み出し、視野を広げるための場として活用してもらえたらと思っています。きっと「TEX」が、社会課題に向き合う最初のきっかけになるはずです。

また社会人にとっても、自分の属する組織から一歩外に出て、客観的な視点から自社の存在意義や強みを考える良い機会になると思います。近年、人材育成の手法としてこうした「越境学習」が注目を集めるようになってきていますが、まだまだ少数です。「TEX」が挑戦したいと思う気持ちを大切にする文化・風土を日本に根付かせていく足がかりになればいいなと思っています。

瀬戸口:「TEX」が経産省のモデルプログラムに選ばれたことをきっかけに「越境学習」に対する認知が徐々に企業間で広まりつつあります。我々は「TEX」の主役になってくれた人たちをビジョナリーリーダーと呼んでいますが、そういった人たちと一緒に新たな地方創生の在り方を世の中に訴えかけていきたいと考えています。

── こうした取り組みを推進する上で、セルムグループならではの強みがあるとすれば、それはなんでしょう?

瀬戸口:僕らは「地方創生×HR」というところで取り組んでいますが、僕ら以外にも地域おこし協力隊をはじめ、地域創生に立脚している人たちは何万人もいます。そういう人の多くは各地域のNPOを通じて、地域の関係人口を増やすべく大企業へのアプローチを行なっていますが、訴求力はまだまだ不十分であると言わざるを得ません。そのようななか、大企業との取り組みを強みとする我々のプログラムが、少しずつハブになってきているという手応えがあります。地方創生のなかで大企業と地方を繋げる役割を担うということも、我々のミッションの一つになると思っています。

 

 


「育成」を通じて、人の未来を明るく変える

── セルムグループとして、この事業を展開している意義、そして今後の方向性についてお話いただけますか?

瀬戸口:先ほどお話した「採用」と「育成」の分断について、地域というフィールドを仕掛けとして使うことで、新たなスタイルの越境の取り組みを体現できるところが、まず大きな意義の一つです。またセルムグループとして、地方創生というテーマにしっかり取り組めるという点も、もう一つの意義だと思っています。そして最後に、新たな事業や市場を創ることによって、我々の価値自体を押し上げることにも繋がっているのではないでしょうか。

 

辰巳:大企業のリーダーたちが社会に対してインパクトを与える姿や、学生と同じ目線に立って社会課題に向き合う姿を目の当たりにすることは、押し付けではなく、若手層が自らの意思でリーダーを目指すための絶好のきっかけになると思います。「こういうリーダーになりたい」という手本となる姿を間近に見せることも、セルムグループの役割の一つではないかと思っています。

瀬戸口:今は誰もが大企業を目指す時代ではなくなり、起業を志す人も多い時代です。しかし、誰しも起業することで自由になれるかというと、そうとも限りません。実は、ベンチャースピリッツを持った上で大企業に入ったときに、何かすごい化学反応が起こると思うんです。そういうきっかけづくりができればいいですね。

── 今後の目標についてお聞かせいただけますか?

瀬戸口:人材育成において求められるものは、これからも時代と共に変わっていくでしょう。我々もその変化を直視し、時代の一歩先を見据えながら事業の形を変化させていきたいと思っています。世の中と事業と自分が連動しているということを楽しみながら、進化を続けていきたいですね。

辰巳:我々はこれまで「人の成長を偶発から必然に変える」ということをミッションに、人の「育成」を大事にしてきました。採用のフィールドにおいても、採って終わりではなくて、その先の未来まで伴走していきたいと思っています。「育成」が人の未来を明るくしていくというのを忘れずに、これからも邁進していきたいですね!

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