Opinion

転換点を乗り越えるために必要な
人材開発の3つの取り組み

 リーダーの「私塾」によって、変革の当事者意識を高める

  社会が大きく変わる際に「私塾」が効果を発揮したことは、歴史が証明しています。
幕末には、漢学や蘭学、兵学や医学塾など、様々なテーマの私塾が多く存在しました。松下村塾(吉田松陰)や海軍塾(勝海舟)、適塾(緒方洪庵)や鳴滝塾(シーボルト)等々、ここから傑出した人材が輩出されて、日本を変えていったのです。

 私塾とは、一定の枠にはまらず、塾主の個性と、有志者の自発性を基盤とした私的な教育の場です。これを企業に持ち込むのです。具体的には部門のリーダーが塾主となって、変革の当事者意識を高め、変革の同志を育てていく場を、私塾と位置付けるのです。時間も手間もかかることではありますが、転換点を乗り切る仲間を作るためには、労を惜しんではいけません。

 私塾はいわゆるOJTとは全く違うものでなければなりません。私塾の内容とアジェンダを考えるとすれば、次のようなものになると思います。

①  自分たちの現時点の実力を評価する
②  今の自分たちが目指せる限界の到達点(成長力)を議論し、合意する
③  乗り越えるべき壁を議論する
④  壁を乗り越えるために何をするか、自分たちはどうあるべきかを議論する
⑤  そして、メンバーの中でも特に期待する人材の業務に、リーダーがマンツーマンで短期集中的に関わる

 こうした内容を、年2~3回程度行うと、自社の等身大の姿を真正面から見据えて、それに対応する具体的な行動を考え、逃げずに実行するという空気が育まれていきます。

 また、このような取り組みによって「うちのリーダーが何を考えているのか」がわかり、チャレンジすることが怖くなくなったり、困ったことが起きればすぐ相談できる人間関係が出来上がります。心理的なホットラインがつながるのです。これも大切なことです。

 そして、私塾によって一番刺激が大きく、成長できるのは、塾主となる人本人です。塾の準備作業やファシリテーション、さらにはマンツーマンの活動を通して、自分の事業や自身のリーダーシップの可能性の大きさに気づくことができるのです。     

 今や企業の競争相手は、既存のライバルだけでなく、ベンチャーやITジャイアントなど多岐に渡ります。彼ら新規のライバル達に共通することは、「世の中を変えよう、もっと良くしよう」という情熱です。これに対抗して、企業としての転換点を乗り越えるためには、彼らの上をいくほどの情熱が必要でしょう。

 大企業には、既に大きな資産や知名度、信用があります。新興ライバル企業達に勝てる部分です。
これらを駆使し、自分たちこそ世の中をもっとよく変える力があると信じて、自ら立ち上がる人材さえいれば、
この新しい競争に勝利することができるはずです。

 今回の3つの提案「コミュニティ」「ヤング・タレント・マネジメント」「私塾」が、そのための具体策の1つだと
考えています。

2017年7月
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