株式会社セルム(CELM)
ご質問やご相談はこちらお問い合わせ
株式会社セルム(CELM)

横河電機株式会社 – “変革はトップから” 経営陣の思考プロセスから グローバル化を進める

横河電機株式会社
人財本部 人財戦略室長
江原直子 氏

2015年に100周年を迎える横河電機。中長期目標「制御事業 グローバルNo.1」を掲げ、
その実現のために「ヘッドクオーター本社管理機能・製品開発機能のグローバル化」「生産体制の改革」「グローバル人財戦略」というビジネス構造改革に取り組んでいる。
構造改革とは、仕組みや仕事のやり方と同様に、それを支える人財の思考プロセスも変わらなければ成し遂げられない。多くの企業が対応に苦慮するところもここである。
今回は人財の側面での構造改革に取り組む人財本部 人財戦略室長、江原直子氏にお話を伺った。

本社のグローバル化とは、
役員のリーダーシップが変わること

田口 横河電機様の掲げるビジネス構造改革。その人財面での改革を推進するために、江原様が横河電機様に入社したと伺っております。まず、その背景からお伺いできますか。

江原 横河電機では数年前から外国人社員の比率が日本人社員を上回っています。売り上げの面でも同様です。外国人社員の方が多いということは、外国人社員の考えるリーダーシップのほうが会社のメジャーになってきたということでもあります。
横河は日本の老舗企業であり、本社も日本にあるのですが、本社が現時点で、そして今後グローバルビジネスを伸ばしていくためにふさわしい役割を果たしているのか、いけるのか、を一度ここで立ち止まり、もとから考えなければいけないということになったのです。
私は以前、コンサルタントとして多くの企業を見てきた経験があります。だから言えるのですが、横河はいいところは最高にいいと思います。ひと言でいえば、開放的で明るく、風通しの良い企業だと思います。まず、役員と現場社員の距離が比較的近い。また、外部から入ってきた私のような人間も寛容に受け入れていただいています。実はもっとよそ者扱いされるかと思っていました。

 田口 「100周年」を迎える企業が、そのようにオープンな文化をもっているのは何故でしょうか。

 江原 制御技術というものの特徴で、自らが単体でビジネスを創出しにくい分野であり、外部の企業とうまくやってきたという実績が文化となってきたということもあると思います。規模が巨大過ぎないということも要因の1つでしょう。合併や合併解消を繰り返してきたので、ストレス耐性も強いかもしれません。しかし、逆にその歴史の中で「ここは横河であり続けたい」という強固なものが一部に残っているようにも思います。

田口 客観的にとらえていらっしゃいますね。

江原 変わるためには本家本元が変わらなければリーダーシップはとれません。つまり、本社がグローバル化しなければいけません。横河がこれまで海外売上・海外従業員比率を上げてきたのは、環境がそうさせてきたのであって、必ずしも内部の実力で行ってきたわけではありません。これが意思をもって本気に取り組んだらもっとすごいかもしれない、と期待をもっています。やってみる価値はあると思います。

田口 本社のグローバル化とは具体的には何ですか。

江原 役員・執行役員のリーダーシップが変わることです。「変革はトップから」です。もう少しブレークダウンした言葉で説明すると、役員の「役割と成果責任を明確化」し、役員はその説明責任を果たすことです。

欧米的な思考プロセスで考えなければならない

 江原 もちろん皆さんも既に理性では分かっていますし、その方向に行動を変えようとしています。それでも海外から見ると「わかりにくい」という日系企業特有の課題がここにあるのです。
現に先日、それぞれの国・地域の人事担当者を集めてディスカッションの機会を持ったのですが、日本の担当者は議論でコテンパンに負けてしまうのです。これは語学力の問題ではありません。日本語だけでディスカッションさせても英語でディスカッションしている海外のチームほど活発なディスカッションにはなりませんでしたから。

 田口 日本企業は人事という仕事の専門性が低い、といわれることがありますが、そういうことでしょうか。

 江原 そうではありません。完全に思考プロセスの問題です。海外で標準とする思考プロセスの中で、普通に仕事をしていたら、すぐに追いつくだろうなという程度です。
しかし、人事という管理制度には、欧米的な思考プロセスがやはりあっているのです。日本では、なんといいましょうか・・・人を管理するために、制度というハードウェアは必要ありませんから。
これからミャンマーやカンボジアなどの国の企業が人事制度を整えるとしても、日本式のものにはなりません。グローバル基準といわれる人事の主流の考え方は、残念なことにやはり欧米式なのです。

変わるために、
「非連続」を意識的につくることが必要

田口 こだわって残したい日本式、のようなものもあるかと思います。その点についてはどうお考えですか。

江原 一旦、意図的に全て捨ててみなければダメだと思っています。海外の方が売り上げも多くて、人員も多いのですから、もはや日本の美徳だけを貫くことはできません。一度すべてを捨てるという「非連続」な状況を作り出すことが必要です。それでも本当にいいところは結果的に残ります。こだわっていたら前に進まないじゃないですか。
そして繰り返しになりますが、スタートは本社の役員・執行役員の意識が変わることです。グローバルスタンダードの思考プロセスで考える本社でないとグローバル化はできません。

田口 組織のトップから変革するということは、日本企業の中ではタブー視されてきたことではないでしょうか。総論賛成でも具体的に、例えば役員の責任範囲の透明化や達成度合いを明確にすることを役員に提案する人は勇気がいるでしょうし、会長・社長自身がまずやりたがらないでしょう。これまではそれが普通でした。

江原 やりにくいでしょうね。ただそれは日本だけの現象ではありません。欧米だって同じです。ですが、彼らの立場では責任や成果を明確にすることが役割ですよね。
横河の人達は本当にいい人で、それこそ会社への愛情に満ち溢れています。一方、欧米の人達が同じ位の愛情をもって会社や社長を支え抜くかというと、そんなことは全くなくて、自分のメリット・デメリットでサッと会社を辞めてしまったりします。ですが、それでも与えられた役割を果たすというエネルギーにおいては欧米の人達の方が強いように感じます。

田口 確かに日本では「役割だからやる」という捉え方はあまり称賛されていないかもしれません。

江原 日本だけであればそれでいいでしょう。ですが、やはり海外から見るとわかりにくい。不透明だ、何を考えているのかわからない、曖昧だ、と。そうなると組織としての力は分散されてしまうではないですか。

田口 曖昧さが力を分散させる。

江原 そうです。分散されていると思います。もちろん、曖昧さゆえにいいところがあるのは承知していますが、一旦これを断ち切ることが必要です。これによって、皆さんが集中できる環境ができていくはずです。

 

大切なのは「タイミング」と「トップから変えること」

田口 具体的にはどのようなことから始められたのですか。

江原 まずは、やはり「企業理念」に立ち返ることですね。
個人の価値観と企業理念が一致することはないと思うのですが、やはりその考え方がどこか好きで働いているのですから、その通りのことをお客様に提供していますか、ということを問い直します。

田口 先日、欧州の現地法人で理念ワークショップを行ってきたとおっしゃっていましたね。あれもその活動の一環なのですか。

江原 あれは、意図的にというより、いいタイミングがあったということです。社長の交替の時期だったのです。新社長になったという何か新しいことを待ち望む雰囲気と、横河本社がグループ会社の仲間として、長年やりたいと願っていたことがうまく合致したのですね。タイミングをつかむということは、とても大事です。
理念ワークショップをやってみて、現法の社員にとっても、横河の理念が腹落ちしやすくなったと思います。目に見える行動として、ワークショップ後に横河の「勇気をもった開拓者であれ」という部分の理念が響いたのか、目標を上方修正してきました。

田口 欧州のような成熟マーケットの中でも目標の上方修正をしてくるというのはすごいことです。

江原 そしてやはり、評価制度を変えます。何でも上流からやらないと下に広がりませんから、まずは役員・執行役員の評価制度を変更し、2014年の7月から運用をスタートします。横河のリーダーとしてやるべきことを明確にし、透明にして360度評価で評価されるというものです。これは怖いですよね。考えてみれば私も対象者に入っていますので。その怖さが身に沁みます。でもやります。
それから、グローバル経営のために重要なポジション=グローバルポジションを明確に定義し、社内に公開し、処遇の面でも欧米の企業にも引けをとらないものになっていきます。グローバルポジションは80ポジション程あるのですが、このポジションの方々を個別に支援することが、今後の私たち、横河の人財本部の業務のメインとなります。

 

変革の賞味期限が切れないうちに
やりきることが大事

田口 とても変わっていく感じがいたします。

江原 これから具体的に利害関係もでてくるでしょうし、自分のキャリアに対する欲もでてくるでしょう。それは人間ですから仕方がないことです。混乱中は業績がさがることも覚悟しなければならない、とも思います。
しかし私は何にでも「賞味期限」があるのだと思っているのです。企業のブランディングにも、マーケティングにも、人事施策にだって賞味期限があります。賞味期限を意識してやっていかないと、できるチャンスを逃してしまうかもしれません。
私自身にも賞味期限があると思います。今の人財施策の考え方で社内にインパクトを与え続けられるのはおそらく今年度いっぱいでしょう。その後は新鮮味がなくなり、変革力も弱くなっていくと思います。ですから今年から新制度をスタートしたのです。変革を落ち着かせ定着するのにもう1~2年かかるとして、変革のスピードとして早すぎることはないでしょう。

田口 とても刺激的なお話を伺わせていただきました。理性では分かっていても、自分がそれをやるのは嫌だという人情が働くことだと思います。

江原 会長には「江原さん、嫌われてください。」と言われました。正直いえば、嫌われたくはないですが (笑)。

田口 今日は本当にどうもありがとうございました。

 

Interviewer/株式会社セルム 常務取締役 田口佳子
2014.1月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

おすすめ記事

お問い合わせ

各種ご質問やご相談については
下記よりお問い合わせください。