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働き方改革4

「働き方改革」を進めるうえで有効な組織・人材開発アプローチ

「働き方改革」のための企業のアプローチは3つある

  今、「働き方改革」の取り組みの中心的な課題になっているのは長時間労働の是正です。
日本でこの問題への取り組みが始まったのは、1960年代です。1965年には松下電器産業(現:パナソニック)が完全週休2日制を導入しました。導入を決めた松下幸之助氏は、ただ社員を休ませたかったわけではなく、海外企業に勝てる仕事の能率を求めるために、週休2日制を導入したのだといいます。「労働時間の減少は仕事量の低下になり業績に響く」という声は当然上がりました。しかし、幸之助氏は生産性を飛躍的に向上させることこそが必要であり、そのために休日が必要だ、と説いたといいます。

今、取り組んでいる「働き方改革」も、生産性向上がゴールであるといえます。その取り組みの内容には
企業毎に違いがありますが、アプローチとしては3つに大別できます。

● 人事制度等の変更によるアプローチ

…時短勤務、サテライトオフィス勤務、年功によらない人材の登用、給与・インセンティブ制度の見直し等

● 組織・人材開発によるアプローチ

…新しい取り組みや制度運用への理解・動機づけ、個人の業務プロセスの見直し、必要なスキルの獲得等

● 業務システム、プロセスの変更によるアプローチ

…AI、RPA等の新しいテクノロジーの活用。サービス価格等ビジネスモデルの見直し等

この3つはお互いに関連し合っているため、並行して進めていかなければならないものですが、私には人の意識や行動に直接働きかける組織・人材開発によるアプローチが、鍵を握っているように思えます。「働き方改革」が求めるものは、働く一人ひとりの意識や行動の変化であり、その変化には丁寧なプロセスと一定の時間を要するものだからです。

 

まず、「働き方改革」の目的への共感を醸成すること

  「働き方改革」の実現のための組織・人材開発のアプローチも3つあるように思います。まずは

1.「働き方改革」の目的への共感を醸成

することが大切です。

社員を含め関係者が、「世の中の流れだからやっているのだろう」という程度の理解では、どうしても受け身になってしまいます。「ここはいいけど、こっちがダメだ」といった第三者的な批評になったり、少し難しい判断が必要になると「やっぱり難しいよ」といって前に進まなくなることもあるでしょう。改革への取組みが組織を混乱させ、かえって生産性を落とすことにもなりかねません。社員が目的を理解し、共感できる状態にすることが
大切です。

この課題に対しては、組織開発のアプローチがそのまま有効でしょう。
組織開発はもともと1950年代の米国で、バラバラの個人を集めただけでは組織として機能しないという課題から生まれたマネジメント手法です。組織としての力のベクトルをそろえるためのマネジメント手法といってもよいでしょう。

その進め方には、診断型と対話型があります。診断型は、サーべイやインタビューを実施し、そこで収集・分析したデータのフィードバックを契機として対話を進めていくアプローチです。ある程度目指す方向が明らかであり、推進力が必要な場合によく用いられます。対話型は、データの収集や分析をあらかじめ行わずに、対話を通じて今後のあり方を探求していくアプローチです。ビジョンや将来像などをつくりあげていくフェーズでよく用いられます。「働き方改革」を進めるうえで、まずは組織開発のオーソドックスなやり方を学び直すことが有効ではないでしょうか。

 

エンゲージメントとプロフェッショナリズム

 目的は理解・共感できたとしても、社員が不安定ではどんな変化も受け入れられません。社員が不安定とは、例えば「今の仕事はあまり好きではない(努力に後向き)。しかし今の会社を離れて働ける自信もない」という状態です。

そこで、人材開発のアプローチとしては

2.所属する職場や企業に対する誇り(エンゲージメント)を育むこと

3.人材としての市場価値(プロフェッショナリズム)を高めること

という2つを目的とすべきです。

この2つをもっている人材は、どのような業種や業務、役職であっても、前向きな雰囲気を発しています。人材開発がそもそも目指すべきなのも、このような人材なのだと思います。

では、そのためにどのような施策を打つべきなのでしょうか。1つひとつは決定打ではないかもしれませんが、「働き方改革」のための組織・人材開発のアプローチとして有効な取り組みのアイディアを、以下に挙げてみたいと思います。

 

所属する職場や企業に対する誇り(エンゲージメント)を育む

①所属長・拠点長のマネジメントOSのバージョンアップ

最初から全員を巻き込んで「働き方改革」を進めようとすると、その工数や複雑さは膨大で、途方に暮れてしまうのではないでしょうか。人によって受け止め方も様々ですから統制もききません。そこで、組織全体の価値観に影響を与える所属長や拠点長に対象を絞って、再教育をすることが有効な一手となるはずです。
所属長・拠点長に絞れば母集団が小さくなるので、アプローチしやすくなります。大きな取り組みを行う際には、取り組みやすさも重要です。

多様な働き方や子育て・介護問題、ダイバーシティ等々、今企業のマネジメントには、これまでの経験がない今日的な課題がたくさんあります。それぞれの課題への処方箋はそれなりにあるのですが、うまく機能しないことを、私たちは「新しいアプリケーションがあってもOSが古いと動かない」といって説明しています。
古いOSとは、一言でいえば環境の変化に対する感性の鈍さのことです。マネジャーの自己開発習慣や学ぶ力、相手を理解し受け入れる力等のことを指します。「おれの若いころは○○だったのに、いつの間にかそれがなくなってしまった」など、現状を嘆く言葉で議論が終わってしまうようなら、世の中の変化を感じ取るアンテナが鈍くなっていると考えるべきです。再教育のテーマは、マネジメントOSのバージョンアップなのです。

OSのバージョンアップのためには、他社交流研修や時代の変化にアンテナを立たせるためのエッセンシャルズ教育(デジタル・ディストラクション、グローバルの動きなど、時代を読む軸づくりとなる教育)などが有効です。このことによって直接的に課題を解決するわけではないのですが、上司が世の中の変化に敏感になったり学ぶ姿勢になることは、部下との関係性を変える力があります。組織全体としての「働き方改革」のために取り組む課題に対する感度も、相当あがることになります。

②目指す姿の「シンボリックストーリー」をつくり、活用する

企業のDNAを共有する取り組みでは、現在を形づくってきた過去の取組みをシンボリックストーリーとして共有する、ということがよく行われています。逆に過去ではなく将来、自分たちはどんな価値を社会やお客様に提供すべきか、という理想の姿を皆で対話して、共有できる形(ストーリー)にまとめて話し合うことは、理想に向かう前向きなアイディアや雰囲気をつくっていくことができます。
「働き方改革」の取り組みでも、このような職場の前向きなエネルギーを高める施策が有効でしょう。

③経営陣が現場に足を運ぶ

かつて日本の製造業が世界一といわれる強さを誇っていた頃、米国のビジネススクールは日本企業の強さを研究し、日本企業の強さは「Management By Walking Around」だと結論付けていました。マネジメント層(経営層)が現場をウロウロ歩き回って生きた情報を取りに行っていたことを、強さの源泉だと分析したわけですが、効用はそれだけではありません。
現場の情報を取りに行った際には現場の社員との対話が生まれます。時には「最近こんなことを聞くが、この現場ではどうか」などと、真剣な議論になることもあるでしょう。改まった会議の場ではなく、職場の日常の中で経営層と真剣な会話が交わされることが重要なのではないでしょうか。そんな職場は、社員は経営の行うことに安心感を持ちますし、自分の職場や仕事に対する誇りも育まれます。
最近は日本企業の中でもあまり行われていないようですが、是非復活させるべきではないでしょうか

 

人材としての市場価値(プロフェッショナリズム)を高めること

① 市場価値向上につながる、学び直しの機会をもたせる

人は、自分のためになると感じる学びを続けている間は、前向きな気持ちでいられます。「学ぶ」という行為は、それ自体が意味のある行為です。また、AIやRPAの普及に伴って人が担う仕事の範囲が変わりますので、学び直しを推奨することは必要不可欠といえます。学び直しの機会は、会社が準備する社内講座だけに限りません。公開講座の利用はもちろん、社外のコミュニティなどで異質な人々との交流を、自発的に行うことを推奨することが有効です。

人材としての市場価値を高めるために即効性があるのは、自分の仕事と同じ分野でプロフェッショナルとして活躍している人材から刺激を受けることです。例えば人事パーソンであればグローバルエクセレント企業のグローバルHR、システムエンジニアであればITコンサルタントの方などです。それが指針になり、その後も自発的に学び直そうとするモチベーションにもなります。

② 職場の中に、新しいことに取り組む「出島」のようなチームをつくる

「市場価値の高い人材」とは、視野が広く、新しい取組みや価値をつくり出す実行力をもった人材といえます。しかし、職場の中で同じ社員と同じ仕事に長く携わっていると、どうしてもオペレーション視点になりがちです。今後、AIやRPAに代替され得るといわれているオペレーション業務に強くなっても、人材としての市場価値は高まりません。

そこで、職場の中に「出島」のような半独立したチームをつくり、視線を外に向け、新しいビジネスモデルの創出にチャレンジさせることをすべきです。社内の論理や今あるノウハウにとらわれないために、メンバーは社員だけでなく、フリーランスのプロフェッショナルや外部の協力パートナー企業、コンサルタントなどから構成するチームがいいでしょう。

苦しい人繰りの中かもしれませんが、職場の一定数の社員は中長期的な視点で次の稼ぎにつながる取り組みに割き続ける、という努力が極めて重要だと思います。

③「満たされないニーズ」探しを習慣づける

プロフェッショナルは、相手の期待を上回る仕事をすることで存在価値を示します。相手の期待を上回るとは、相手が満たされていないニーズを発見し、それに応える方法をつくり出すということです。依頼された仕事に一生懸命に取り組むことだけでは、感謝はされても、相手を驚かすような仕事にはなりません。これからは社員全員に、そんなプロフェッショナルの仕事のやり方をクセづけしていく必要があります。顧客にも、他部署の仕事相手にも、今満たされていないニーズは必ずあるものです。

「本当はこうなったらいいなと思っていることは、どんなことですか」
こうした問いを、日々の業務の中で繰り返せる社員が1人、また1人と増えていくと、市場価値の高い人材が育つ風土ができていくはずです。本来仕事とは、やればやるほどやりたいことが出てくる、楽しいものだと思います。そうした仕事本来の楽しさを思い出すためにも、年に1回程度は2~3ヶ月間の「ニーズ新発見キャンペーン」を行うことをお勧めします。

「働き方改革」は日本の産業全体の生き残りをかけた構造変化です。達成できなければ、衰退がはじまるのでしょう。しかし「働き方改革」という構造変化を遂げた後の職場は、職場や企業、仕事へのエンゲージメントが高く、市場価値も高い人材で溢れているはずです。この機に一気に取り組んでいくことで未来の発展にむけた道筋を確かなものにしようではありませんか。

※この原稿は「CELM BELIEF vol.20」に掲載されたものです

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