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株式会社りそなホールディングス – 次世代経営人材の選抜・育成のプロセスの中に、りそなの価値観の実現を織り込む

株式会社りそなホールディングス
取締役兼代表執行役
古川 裕二氏

2003年の経営危機時に公的資金の注入をうけた、りそなグループ。
返済不可能ともいわれた資金を、予定の2018年を前倒しして2015年6月に完済を果たした。
完済までの10数年間、りそなグループは不断の社内改革を行ってきた。
意思決定の透明性・客観性を保つ仕組みの構築やお客さま視点を重視する価値観を浸透させること等々…。
これは今後も、りそなグループが存在価値を示し続けるために、維持していかなければならない取り組みと位置付けられている。
りそなグループでは、そのための具体的な方法を人材の評価・育成施策の全体に、とりわけ次世代の経営を担う人材を育成するプロセスの中に深く織り込んでいるという。
この取り組みについて、りそなホールディングス 取締役兼代表執行役の古川裕二氏にお話を伺った。

「りそならしさ」を根付かせるための具体策が人事制度である

加藤 りそなグループ様は金融機関の中でも特に「攻めの姿勢」を強く打ち出しているように感じております。
その背景からお伺いできますか。

古川 りそなの原点は、本来ならば生き永らえるのが許されない状況であったにも関わらず、公的資金をお借りして会社を存続させていただいたという点です。その後、「りそな改革」と呼ぶ改革に取り組み、2015年に完済というところまで漕ぎ着けました。
では次のステージとして、これからどのような価値を社会に提供していくのかを考えます。
金融業界では、「過去どうだったか」が判断基準になる傾向がありますが、りそなは、まずお客さまを起点とし、今までにない商品やサービスに挑戦していかないと生き残っていけないと考えました。他社の成功を見て真似をするのではなく、他社より先にやってみて、やりながら修正していくということを、業務の様々な場面で重視しています。

加藤 そのようにお考えになる、きっかけがあったのでしょうか。

古川 何か特別なきっかけがあったわけではありません。この10数年の経験がそう思わせているのではないでしょうか。りそなの課題解決を前進させてきたリーダー達は、現状をよく理解した上で、「中長期的にはここにもってい くんだ」ということを具体的に語りました。「他社はどうなっていて、自分たちの強みはここだ。だからこう挑戦 していくんだ」「それはいつまでに、どんな形で具現化するんだ」。これは、この10数年間ずっと、細かいところまで、様々な会議の中で求められてきましたし、応えてきました。
それに応えられる人材が、幹部社員になっていますし、これを目の当たりにしてきた周囲の社員も、そういった素養がこの会社の中で求められるのだと気付いていると思います。

加藤 そんな人材を今後も育成・登用することが、りそな様が目指す姿を実現するための人材戦略ということですね。

古川 そうです。
公的資金完済の目途がたった2015年に、私どもは新しい中期経営計画を発表しました。
そのタイミングで指名委員会はサクセッション・プランを見直し、「役員に求められる人材像」も7つの要素にまとめ直しました(図 1)。三角形の下側の3つがマインドセットで、行動の起点とすべきベースです。

その上で実現させるための力を求めています。「役員に求められる」というタイトルがついていますが、りそな社員全員に求める「りそならしさ」だと言い換えてもいいでしょう。そのため、りそなのサクセッション・プランの概念図(図2)では 新入社員まで含めた概念図になっています。レベルの差こそあれ、新入社員の頃からそれに基づき評価・登用されていく人事制度を目指しています。これが掛け声だけになってしまわないように、制度の運用プロセスの中に織り込んで実現させていかなければならないと思っています。

サクセッション・プランの対象者は、次世代トップ候補者から新任役員候補者です。具体的には支店長以上が対象になります。選抜プロセスと育成プロセスがあり、特に透明性と客観性を確保することに心を配っています。

透明性・客観性を確保する仕組み

加藤 具体的にはどのようなことでしょうか。

古川 例えば、支店長以上には年に1度、毎年360度評価を行っています。多くの人から意見を聞くことによって、正しい判定が出来ることを目指しています。支店長以上は組織の長でもありますし、その組織の力量を最大化することが職務です。年度初めに自身の課題を認識したら、各自が年度中に改善する行動をとるように求めます。そして1年後にまた360度評価を行って、進捗を確認します。

加藤 360度評価は受ける側の抵抗感が強いものです。続けていらっしゃるということが素晴らしいですね。

古川 また、役員以上の選抜には4段階のアセスメントを行っています。金融業界は信託や不動産、マーケット等々業務が幅広く、それぞれ高い専門性が必要です。ですから、専門性とマネジメント力が高い人材をいったん支店長として登用し、その後その人物が会社全体のことを考え、全体最適で物事を決められるかどうかを確認していきます。

評価の客観性を担保するために、アセッサーは社外の有識者になっていただきます。役職レベルごとに求められる職責を果たせる視点をもっているか、考え方や判断はりそならしいか、などを評価します。
そして、評価結果は全て指名委員会に報告をします。この指名委員会の委員も社外取締役のみで構成し、客観性を担保しています。
内容は、例えばアセスメントⅠは、執行役員になって2~3年目を対象に行うアセスメントです。対象者は、5年後に自分がりそなグループの社長に就任したと仮定して、模擬経営会議でプレゼンテーションを行います。そのプレゼンテーション内容について、社長、社外取締役、講師がアドバイスを伝え、「経営幹部としての課題」をフィードバックします。
役員上位層に向けて行うアセスメントⅢでは、仮想企業のトップになったと想定した経営シミュレーションを 行います。リーダーとしてマインドセットをベースとしたコミュニケーションが的確に取れるか、また、非常時に適切に対処できるかなどを観察します。
全体を通じて特に重視しているのは「インテグリティ(信頼される高潔さ)」です。先ほど、「役員に求められる人材像」を2015年にまとめたと申し上げましたが、これは今までもあった価値観を再整備したものです。唯一言葉として追加したのが、このインテグリティなのです。

加藤 インテグリティのような概念をどのように確認するのでしょうか。

古川 業績はもちろん大切ですが、りそならしさを体現してその成果をあげているかどうかを、非常に大切にしています。率先垂範をしているか、部下を活かしているか、風通しの良い組織風土を構築しているか等といった具体的な日常の行動を、様々な機会をとらえて確認しています。
昔であれば上司の耳が痛いことはいってはいけないと思う男性社員が多かったかと思いますが、今は女性社員もいれば、年上の社員もおり、更にパートナー社員もいます。
そのような方々と上司はしっかりコミュニケーションをとり、組織運営することを求めています。

りそならしい人材を育成する仕組み

加藤 育成プロセスについてもお伺いできますか。

古川 特に4~5年前から人事ローテーションを強く意識して行っています。地域密着がりそなの戦略ですので、グループを経営するためには様々な地域のマーケットやお客さまを知ることが必要だと考えるからです。
また、地域密着の戦略の要である支店長が、りそならしさを実現できる人材であることは重要です。そこで、就任1年目の支店長を対象に、自分に任された支店の中長期の経営方針を作る「支店長リーダーシップ研修」を行っています。
支店ごとにお客さまの層も競合の状態も異なります。お客さまとマッチする商品も異なりますし、支店内の戦力もまた異なります。参加者はまず半年間の経営スキル研修を受けた後に、自分の支店とマーケットを分析し、戦略を考えて一人ひとりがプレゼンテーションを行います。それぞれの地域について議論するので、りそなの経営陣にとってもこのプレゼンテーションは大変なプラスです。
またマーケットだけでなく、リーダーシップも一人ひとり異なっていて当然だと思います。この研修は、その人なりのやり方や考え方、自分の担当する組織へ求めるもの、コミュニケーションのとり方を身に着けるプロセスそのものなので、本人にとっても、一皮むける貴重な経験になっていると思います。

加藤 自分の支店の方針や戦略に対して、経営陣からのアドバイスが受けられる場でもあるという意味でも有意義ですね。

古川 また、りそなグループの中のことしかわからないのでは発想が狭くなりますので、「他流試合研修」も大事なものと位置付けて行っています。これは様々な方法で行います。他業種の方のお話を聞く機会を設けたり、異業種研修に派遣をする場合もあります。視野を広げるということだけでなく、人的ネットワーク、もっと砕けた言いかたをすれば異業種の友人をつくって、様々な相談ができる関係を築くことにもメリットを感じています。
全員ではありませんが、若手の社員をお取引先企業に1~2年間派遣をするという人材交流も行っています。金融業界と比較しながら、異なる視点で物事をみられる人材を育成することができます。

取締役会の場が、経営人材の育成に非常に有効なのではないか

加藤 様々な取り組みをされていますが、特に、経営人材の育成の観点で効果的と考えるのはどのようなものですか。

古川 個人的な意見ではありますが、取締役会の場が非常に有効なのではないかと考えています。りそなの取締役会は、経営経験者や各分野の専門家である社外取締役が過半数を占めており、1回の会議が3時間以上に及ぶこともあります。様々な案件について、真剣勝負の議論をしています。経営の立場に立った人でないと語れない判断基準というものがあり、私自身もいつも刺激を受けています。議論を受けて考え直したり、こんな質問があるだろうと考えて準備する。その繰り返しが、おそらく経営人材を育成する上で、非常に有効なプロセスではないかと思います。

加藤 具体的な方法に落として、人材育成・登用の仕組みを作っていることがよくわかりました。本日はありがとうございました。

Interviewer/株式会社セルム 常務執行役員 加藤 友希
2016年10月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

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