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大阪ガス株式会社 – World-class Company に なるために

大阪ガス株式会社
執行役員 人事部長
藤原敏正 氏

グローバル化は、「する」「しない」という選択(preference)ができるものではなく、ビジネスの前提(precondition)であると捉え、「World-class Company」になることを宣言した大阪ガス。
安定かつ健全であることが使命であるガス供給事業を守りながら、新しい事業領域開拓にチャレンジする
同社の戦略・人事構想について執行役員 人事部長 藤原敏正氏にお話を伺った。
(※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。)

変化は必要で且つ、避けられない

加藤 大阪ガス様は中期経営計画「Field of Dreams 2020」の中で、グローバルなエネルギー・環境企業グループへの発展を宣言していらっしゃいます。そうお考えになった背景をお伺いできますか。

藤原 私たちは産業や生活の基盤となる都市ガスを供給していますので、私たち自身が現在・将来を通じて健全であり続けることが大事です。健全であることで地域の方に安定して都市ガスを供給できます。
都市ガスの原料となる天然ガスは国際エネルギー市場での価格の影響を大きく受ける産業ですので、都市ガスを供給するという現在の本体事業だけでなく、エネルギー調達の上流事業にもコミットして、バリューチェーンの上流・中流・下流間で補完しあう関係を築いておく必要性を感じています。 また、私たちは東日本大震災をきっかけに、エネルギー構造がガラッと変わる可能性を目の当たりにしました。2013年の11月から国でガスの規制緩和の検討も始まっています。これがどのような形で決着するかは未知数ですが、今後、「黒船来航」と同じくらい大きな変化があるかもしれません。大阪ガスが健全であるために変化は必要ですし、避けることもできないため、今、チャレンジをスタートさせています。
エネルギーの上流事業へのコミットということになると舞台は海外になり、我々にとって大きなチャレンジです。また例えば、不動産事業・IT・材料ソリューション事業など、非エネルギー事業の開拓にも積極的に取り組んでいます。

育成コースを2つに分け、実務の中からリーダーを育成する

加藤 新しい事業となると、仕事のやり方も変わりますし、それに伴って求める人材も変わってくると思います。

(図1) 人事制度の概要

藤原 今取り組んでいるチャレンジを支える基盤は、都市ガス供給を中心にした国内エネルギーサービス事業が健全であることが大前提で、この事業をきちんと経営できる人材は大事です。しかし、新しくチャレンジする事業に必要な人材要件とは異なるでしょう。そこで、2011年から役割期待別に「プロフェッショナルコース」「ゼネラル/スペシャリストコース」と、育成コースを2つに分けた人事制度をスタートさせました。
「プロフェッショナルコース」は、現場や業務のプロを育成することを目的としており、「ゼネラル/スペシャリストコース」は、ビジネスプランの立案やクロスボーダーの仕事での活躍を役割とする人材です。(図1)
「ゼネラル/スペシャリストコース」の育成体系としては、セルムさんにもご協力いただいて社内にGUPⅠ、GUPⅡ、MLPという3つの研修コースを開設しています。このコースは社内MBAのような位置づけで、MLPまでを受講した人材は、事業運営の知識・スキルのベースは身につけたとみなして経営幹部候補生としてキャリアを形成していく、そんなリーダー育成の仕組みを作っています。

海外に出ていくグローバル化
海外を取り込むグローバル化

加藤 海外事業を担う人材と国内事業を担う人材を別に育成すべきかどうか、という議論もありますが、どのようにお考えですか。

藤原 必要な考え方は同じだと思います。
ただ、結果的に海外事業を経験した人材の方が多様な経験をしているので、モノの見方が柔軟になるということはあると思います。この点については、人材のローテーションを進める予定です。海外で得た感覚を国内で試してみる。役に立つところは取り込む。日本企業や大阪ガスの良いところは変えないで頑張る。こうして会社の内なるグローバル化をすすめていきたいと思っています。

加藤 内なるグローバル化、という言葉がでました。大阪ガス様ではグローバル化をどのように定義して、取り組んでいらっしゃいますか。

藤原 グローバル化には、大きく捉えて二つの種類があると思います。一つは「海外に新しいビジネスフィールドがどんどん広がる」というものです。資源や人材の新しい供給源や、商品やサービスを提供する市場が広がるという意味合いです。一般的にグローバル化というと、このことだけをイメージする場合が多いでしょう。
もう一つは、日本の既存システムが大きな変更を迫られたり、海外のものにとって変わられるなど、日本国内にいても否応なくさらされる変革や競争のことです。
私たちはこのような内なるグローバル化に対して、まずは仕事の面であれ意識であれ、自分とは別の世界のことだという「境界線をひかない」ことが大切だと思います。むしろ、今、なんとなく存在している「境界」を越えてビジネスの機会を伺い、「やれることをやってみよう」という気概をもって行動をすることが現時点でのグローバル化の目標です。

加藤 海外にフィールドが広がるグローバル化への取り組みはいかがでしょうか。

藤原 海外に新しいビジネスフィールドが広がることは、内なるグローバル化に先行して進んでいます。
例えば私たち大阪ガスグループの材料ソリューション事業を行っている大阪ガスケミカル㈱は、ジャコビカーボンズAB社を買収し、世界の活性炭市場第三位の企業となりました。これによって、これまでは100名もいなかった外国人社員が一気に1200名に増えました。今はそれほど実感がありませんが、英語で会議をしたり、社長の方針説明に同時通訳をつけたりする機会が、今後増えるでしょう。
人員に関しては、日本人社員を現地に送り込んで頑張るという形ではなく、現地の方が現地で頑張るという形が自然なのではないかと思います。
例えば、私たちは100%資本の発電所をグアムに持っています。ゼネラルマネジャーもプラントマネジャーもオペレーターも、私たちが出資する前から勤めていただいている現地の方です。
ゼネラルマネジャーは年に何回か日本に来ていますから、その時にこちらの社員とワイワイと食事をするなどで、お互いの理解を深めています。そうした人としての交わりは、協力関係を築くための原点です。

必要とされるものを持っていれば、
Win-Winの関係を築ける

加藤 市場としてアジア地域が特に注目を集めていますが、大阪ガス様ではいかがですか。

藤原 初めに、私たちは健全であり続けることが、地域へのガス供給という使命を全うするためにも大事であると申し上げました。投資適性は相当厳しくチェックしています。
そのため、私たちが海外エネルギーバリューチェーンを考え始めた当初は、信頼性・安定性という点でアジア地域にはあまり目を向けていなかったのですが、最近の経済の成長は無視できません。産業が成長すれば、エネルギーの高度利用の需要も増えていきます。
シンガポールではCity Gasと合弁で産業用天然ガスの販売を始めていますし、タイでは、LNG受入基地のオペレーション指導の受託を足がかりにしてエネルギービジネスを計画しています。

加藤 海外へのフィールドはどんどん広がっているのですね。

藤原 私たちは、まだまだ意識の上ではドメスティック企業です。英語があまり流暢ではないという自覚もありますし、気持ちの境界線をなくしていくのが課題です。
ですが、私たちが培ってきた省エネルギーのエネルギー供給技術は、きっと必要とされ、使っていただけるはずです。その点を理解していただければ、相手は日本人でも外国の方でも同じことです。
かつて、日本人が技術を武器に欧米に進出していったように、技術の価値や活用法の部分でWin-Winになるような状況がみつけられるのではないかと思います。もちろん相手の国の文化や習慣、言葉を少しでも知っていれば、はるかに効率的に物事を進めることができます。
これが、私たちのグローバル化の進む方向です。

自社のよさを維持しながら、グローバルで通用する人事制度の構築が課題

加藤 その戦略を支える人事施策についてはいかがでしょうか。

藤原 ここが難しいと感じているところです。私たちは、これまでチームワークを重視し、チームを支えるメンバーに対して心を配るフェイストゥフェイスの人事を行ってきたと思います。
例えば今年の新入社員研修の際には、全員の日誌に目を通して、一人ひとりにコメントをつけていましたし、配属の際には辞令の交付だけで終わらせずに、決定理由や期待を伝えてきました。
グローバル化に対応するために、ベルリンの壁が壊されたときのように大きな変化を一気に起こす方法もありますが、痛みが伴います。徐々に壁が低くなっていくような方法を、私たちは選択したいと思っています。
これからのチャレンジですが、チームワークを重視する良さは生かしつつも、事業領域を拡げ、それぞれの事業領域を発展・成長させていくために、個の挑戦や成長をもっともっと促進していけるような人事を実現させたいと思っています。

加藤 タレントマネジメントを血の通った形でされているのですね。

藤原 しかし、これは対象とする人数が限られているからできることでしょう。グローバルなエクセレントカンパニーがやっているようなITシステムをつかったタレントマネジメントの必要性も感じていますし、もっとスピード感をもってやらなくてはいけないと反省をしているところです。
また、①大阪ガスがこれからチャレンジする市場で育った人材を中途で採用する入口 ②中途採用でも十分に実力が評価される評価制度 ③大阪ガスグループとしてのアイデンティティを一つにして頑張っていける仕掛け等も早急に必要です。まだお話できる段階ではありませんが、準備を急いでいます。

加藤 自社のよさを生かしながら事業の変化に向けて、戦略を促進する人事を推進されていることがよくわかりました。本日は、ありがとうございました。

Interviewer/株式会社セルム 取締役 加藤友希
2013.11月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

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