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オムロン株式会社 – ミドルのマネジメント変革を経営計画実現の核とする

オムロン株式会社
人財総務センタグローバル人財イノベーション部長
久田浩司 氏

2011年に発表された長期経営計画「Value Generation 2020(略称:VG2020)」。
人財戦略をVG2020遂行のための重要な柱と位置づけ、具体的には 「コマンド&コントロール」から「コミュニケーション&コラボレーション」へのマネジメントスタイルへの変革が必要だと課題を設定した。
人財開発施策全体を見直し、対象者の満足度ではなく、「行動が変わり、定着する」ことを成果として把握する仕組みを持ったマネジャー対象の人財開発施策をスタートさせて、3年目を迎える。
この取り組みの責任者である、人財総務センタ グローバル人財イノベーション部長 久田 浩司氏にお話を伺った。

 

「VG 2020」遂行のために、マネジメント変革に動き出した

松村 2011年に「VG 2020」が発表されましたが、その中での人財戦略の位置づけはどのようなものだったのでしょうか。

久田 人財戦略は「VG 2020」遂行の要の1つです。「VG 2020」達成に向けて、我々は新たな価値を創造しなければなりません。新たな価値の創造のためには、多様な人財が集まってチャレンジを続けられることが必要です。
そのためには、チームのリーダーであるマネジャーがどのようなマネジメントをするのか、が非常に重要です。

松村 どのようなマネジメントが必要だと考えたのでしょうか。

久田 キーワードとしてはマネジメントのスタイルを「コマンド&コントロール」から「コミュニケーション&コラボレーション」へ変革することです。そして従来以上に「とがり」と「つなぎ」のあるチームにする必要があると考えています。
もともとオムロンではチームで仕事をする事を大切にしてきました。しかしこれまでのチームは、マネジャーが価値観や方向性をもっており、そのリーダーについていくメンバーをつくりあげるようなところがありました(コマンド&コントロール)。
また当時は、縦割りで成果や業務をとらえる傾向が強く、その中で成果責任を果たすためにマネジャー自身がプレイヤー化してしまう傾向が強くありました。そのため部下の育成意識が薄くなり、気が付けば全員が疲弊しているのではないか、という危機感がありました。
さらに、当時の上級マネジャー達は、若手に対して「育っていない」という問題意識を持っていました。しかしそれは、本人達の問題ではないのではないか、とも感じていました。上級マネジャー達が「任せて、やらせて、とがりをひきだして…」というマネジメントを十分できてきただろうか、という反省です。と同時に、それらのマネジメントスタイルは、学ぶことで後天的に身に付けられる、と考えました。
そこで「VG 2020」遂行のための人財戦略としてマネジメント変革に取り組んだのです。

 

マネジャーだけに変革の責任を任せていては、変わらない

松村 戦略との関係も、目指す姿も具体的だと思います。変革を進めるにあたって、葛藤や「壁」のようなものはあったのでしょうか。

久田 様々なとがった個性や価値観、専門性、アイディアをぶつけあい、皆が生き生きと動いて、新しいものを作り上げていく。これを我々は「とがり」と「つなぎ」と呼んで、オムロンが求める人財の要件にもしています。このことそのものは、多くの者が賛同する理想であり、実現したいと思うことでしょう。
しかし、理想をいうのは簡単ですが、実現させるのは難しいものです。組織として成果を出さなければならない責任と、部下に思い切って任せて育てる、ということの両立は、非常に難しいものです。私も含めて、今まで成果をあげてきた価値観や行動を自己否定して変えていかなければいけません。 そこが我々のチャレンジでした。

松村 もしかしたら短期的な成果や効率の低下を招くかもしれないことに対してコミットするのは、勇気のいることですね。

久田 そうかもしれません。しかし、我々オムロンは企業理念を非常に大事にしており、その企業理念の柱の1つに「人間性の尊重」というものがあります。人の多様性、人格、個性の尊重や創造性の発揮など、人間ならではの価値を活動の基本にするというものです。「コミュニケーション&コラボレーション」のマネジメントスタイルを目指すことは、我々が望んでいる会社の姿でもあります。
弊社でマネジャーに昇格するためには、いくつかのアセスメントや試験をクリアすることが条件となっており、マネジャー達がマネジメントの素養をもった人財であることには疑いがありません。しかし、だからといって本人に任せているだけでは、なかなか事態は変わりません。ここを何とかしなければなりません。
このような現実の中で、「VG 2020」の遂行のために、人財開発施策全体を見直し、新しいコンセプトの「新任経営基幹職研修」を企画し、スタートしたのです。

 

「行動が変わり、定着する」ことを成果として把握する

松村 今までの「新任経営基幹職研修」との違いは、どのようなところでしょうか。

久田 新任マネジャー達が、新しい方向性のマネジメントスタイルを確立し、身に付けるまでをフォローすることにしました。オフサイトの会合(研修)と職場での実践、職場での行動についての周囲からのフィードバックやフォローコーチングを行う一年間の研修です。研修という域を超えたプロジェクトと言ってもいいと思います。
マネジャーである彼ら自身が、経営者の視点でモノを考えるということも重視しています。彼ら自身がビジョナリーリーダーとして、とがった人財に成長してほしいのです。
また、研修成果の指標を、受講者アンケートではなく「職場における行動がどう変わったか」であると設定し、マネジメント行動ごとの量の把握や、周囲の評価の変化などを把握する仕組みをつくりました。
経営から人事施策に求められることは、受講者の満足度ではなく、「その結果」です。そのことを真摯に受け止めて、それぞれの現場において、受講者である新任マネジャー達がどのような行動を、どれだけとったのか、どのようなマネジメントに変わったのか、を成果指標と捉えることにしました。

松村 「単なる研修ではない」と言われている理由がここにあるのですね。

久田 企画を固める当初の段階で、何人もの上級マネジャーに人財課題のインタビューを行いました。前述した「人が育っていない」という問題はその際に指摘されたものです。
同時に、事業目的の達成のために、何が問題なのか、その解決のためにはどんなプログラムが必要なのかを、企画の段階から事業の責任者クラスを巻き込んでつくっていきました。パワーがかかりますが、この取り組みは他の人事施策でも、もっとやるべきだと思っています。
施策の中でも受講者の上司を巻き込む仕組みも取り入れました。受講者の上司には、個人面談などを通じて成果を出すための支援者になってもらいました。支援いただくための「上司セッション」という形で、今回の新任経営基幹職研修が目指していることなどを伝える機会もつくりました。

 

受講者を中心に、組織全体が変わっていく

松村 この新任基幹経営職研修をスタートさせて3年目を迎えられますが、どのような成果をお感じでしょうか。

久田 新任経営基幹職研修を卒業していく受講者の皆さんの元気な姿をみると、うれしくなります。
例えば、最終発表会の発表にも個性があり、「やらされている」のではなく、自分の中からでてきた言葉の強さや意思を感じることができます。未来に対する自信や希望、期待感のようなものがあると思います。これは何よりも大事なことです。
一般論でいえば、新任経営基幹職に昇進したての4月は元気でも、時間が経つと共に理想と現実のギャップの中でだんだん当初の元気がなくなる事が多いのだと思います。ですが、弊社では夢や希望を持っている姿を見ることができます。

松村 それはうれしい事ですね。

久田 受講者の個々の変化だけではなく、周囲とのかかわり方や関係性が変わってきたと思います。
例えば、上司も部下も関係なくコミュニケーションをとっているシーンを見ることが多くなりました。対立意見を出し合うことに躊躇せずにコミュニケーションをとる、まさに「ワイガヤ」が起きています。これは、とても象徴的だと思います。この「ワイガヤ」から、より大きな「とがり」を引き出し、活かしていけるのではないかと期待しています。
また受講者のつながりは継続していて、部門を越えた横のつながりができ始めています。同じ職場の中でも、去年の受講者と一緒に職場変革に取り組んでいるという話も聞いています。

松村 受講者が核になって、いい影響が広がっているようですね。

久田 この施策を始めて3年目になりますので、受講者の累計は、国内のオムロングループの管理職の中で1割強を占めます。
さらに、受講者と面談を行ってもらうための上司セッションや、上司向けのマネジメントセッションの受講者をあわせると、全管理職の3分の1程度が、この施策に関わっていることになります。大きな流れになっていくことを期待しています。
最近では、既任マネジャー向けの「マネジメントセッション」に定員を超えるほどの申込みがあったり、卒業生が「あの研修だけはうけたほうがいいよ」という話をしているという声も聞きました。しっかりと組織に浸透してきた感覚があります。

 

成果に安住せず、常に見直しを繰り返していく

松村 最後に、今後に向けての課題やチャレンジをお伺いできますか。

久田 今回の取り組みは現場での受講者の変化がわかることで、運営サイドもモチベーション高くPDCAを回せたこともよかったのだと思います。一定の成果は感じていますが、人事施策は、「これでゴール」というものはないと思います。変化する環境の中で、変化する課題の中で、何を変えていくべきなのか、何に取り組むべきなのかを、常に考え、常にチャレンジし続けなければならないと考えています。
またこの取り組みでは、新任マネジャーを施策の中心的な対象者としましたが、既任者も含め、もっと組織全体に変革を起こすことを促進していかなければなりません。
また、我々はグローバル企業に変貌しようとしています。グローバルなリーダーをどう育成していくかも、大きな課題として取り組んでいます。

松村 新しい価値が創造されていく可能性が感じられますね。本日はありがとうございました。

 

Interviewer/株式会社セルム 取締役 松村卓人
2014.9月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

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