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三菱自動車工業株式会社 – 企業の転換点に対応する三菱自動車の人財開発のシナリオ


三菱自動車工業株式会社
執行役員 人事本部長 橋本 哲也氏
人事本部 マネージャー 上田 徹氏、藤谷 和弘氏

三菱自動車は2016年12月、日産自動車とのアライアンスの下、新たな経営体制をスタートさせた。
企業の転換点において、人事が果たすべき役割は大きい。
同社ではこのタイミングを、2014年から取り組んできた人事改革と教育改革をさらに大きく進めるチャンスと捉え、取り組みを加速しようとしている。
どのようなシナリオを描き、どのように取り組んでいこうとしているのか。
執行役員 人事本部長の橋本哲也氏、人事本部 マネージャーの藤谷和弘氏と上田徹氏のお三方にお話を伺った。

転換点をチャンスと捉え 変革を加速させる

加島 まず、三菱自動車様(以下、「MMC」)が今、人事改革と教育改革に取り組まれた背景をお教えいただけますか。

橋本 MMCはこれまでも、他社と提携、解消といったことを繰り返してきた歴史があります。今また、2016年の燃費不正問題でお客様に多大なご迷惑をおかけし、その後日産自動車とのアライアンスが成立するという、企業としての大きな転換点に立っていると認識しています。
転換というのは、内側が変わらないとうまくいきません。企業で言えば、人の側面が重要です。MMCでは、この10年くらいずっとやりたいと思いながらやれないでいた人財課題があり、今、ここで一気に改革を加速させていくチャンスだと捉えています。

藤谷 実は人事改革・教育改革は2014年から取り組んでいます。
当社は2004年から05年にかけての経営危機と、そこからの再建の過程の中で、必ずしも十分な人財投資ができませんでした。その後、お客様視点での社内改革を進める中で、当社を変革し、スピード感を持って成果を上げるタレントの不足が浮き彫りになりました。

加島 そこから具体的にどう動かれたのですか?

藤谷 まず2014年に、社員100人インタビューを行いました。その回答には、「自社の人事制度をよく知らない」「人事には社員を育てていく感覚がない」といった趣旨のものが多くありました。これはなかなかショッキングでした。
その結果を受け止めて、まず我々人事の人間が現場に足を運び、職場課題を迅速に吸い上げ、サポートするビジネスパートナーを2015年に各職場に配置しました。

上田 私はまさに制度の立ち上げ時にビジネスパートナーに任命されました。担当する部署に出向いても、最初は思うほどには関与できなかったと思います。自分自身、相談をされても即答でいい答えがだせるわけではない、という戸惑いもありました。
しかし部門の方々に少しずつ認知されていくにつれ、「とにかく一度、話してみよう」という雰囲気が生まれていきました。現在はスタート当初よりもずっと相談の数も増え、人事側の対応の質も上がってきていると感じます。

藤谷 私は教育改革の立ち上げを担当しました。私は当時、外部機関のMBAコースを修了したばかりで、そこでの教育が、教育の理想形の1つではないかと思っていました。
例えば、最初の授業の時、70名の受講生一人ひとりの紹介を、講師が何も見ずに、「この人はこういう経歴の人です」「あ、あなたは写真より少し太りましたか?」といった感じで行うのです。出願書類を相当読み込んでいないとできません。授業も本当に素晴らしかったのですが、教育者としてのプロフェッショナリズムに衝撃をうけたことを鮮明に覚えています。
それをMMCの中でどのように実現できるだろうかと、ずっと考え続けて取り組んできました。

 改革の3本柱とゴールイメージ

加島 現在進めているお取り組みについて伺えますか。

橋本 現在、人事本部はCEO直下の組織にしています。意思決定を早く行い、改革のスピードを上げていくという姿勢の現れです。そして、改革には、大きく3つの柱があります。
1つ目は、評価報酬制度を変えたことです。これまでの年功序列型から成果連動型に変えました。
2つ目は、タレントマネジメントの仕組みを取り入れることです。特にリーダー育成に力をいれていきます。
3つ目は、人事がイニシアチブをとったリソースマネジメントです。これまでは採用や配置、昇進のコントロールも比較的ライン部署に任せていましたが、人事がイニシアチブをとって積極的に関わろうとしています。

藤谷 今までのMMCは、職場内のバランスを大切にしてきたことで、結果的に年功序列的な評価・昇進運用になっていたように思います。それをある程度崩して、優秀な人を発掘し、育て上げるというのはMMCにとって新しく、重要な取り組みであると思います。
特に改革を進めるときには、ものすごいエネルギーが必要になります。これからはそんなエネルギーを持った人財に、権限移譲できるようにしていきたいと考えています。

上田 その際に人財の登用がブラックボックスにならないように、昇進要件を明文化しました。これを社内では「クオリティゲート」と呼び、誰が見ても一定の水準に達した人だとわかるようにしました。これによって、社員が納得できる人財登用ができると思っています。

橋本 今、MMCでは人財ピラミッドのひずみが課題となっています。ミドルクラスの人財が手薄になっているのです。業務にも当然しわ寄せがきているため、実務を任せられるミドルクラスの人財の採用を要望されることもあります。それは理解できるのですが、その要望のままに人財を採用していくと、また5年後10年後にひずみを生む可能性もあります。ですから、人事がラインのパートナーとなって一緒にラインの課題解決にあたりつつ、人財ピラミッドのひずみの解消という中長期的な視点も持って取り組む必要があるのです。

加島 改革のゴールはどのようにイメージしていらっしゃいますか。

橋本 先日、MMCで求められる人財を明文化した「MMC WAY」を策定し社内での浸透活動を現在推進中です。
そこで明文化したような人財が活躍できる企業になることが、人事改革・教育改革のゴールといえます。

加島 「MMC WAY」はどのようなプロセスで作られたのですか。

橋本 「MMC WAY」策定の直接のきっかけは、2016年の燃費問題が、なぜ社内で顕在化できなかったのかを反省したことです。
ただ、「MMC WAY」の構想は、人事改革・教育改革のスタート当初から持っていました。内容は、人事改革・教育改革が目指していた行動規範と、MMCがこれまで大切にしていた価値観を整理し直したものだといえます。
人財像を明文化することで、トップがクリアにメッセージを出す、あるいは定期的な発信を促進すること、そして企業全体としても組織と社員に価値観を浸透させるコミュニケーションを行いやすくする、という想いから、「MMC WAY」の整備に至ったのです。
このゴールに向かって、人事体系や教育体系をつくってきています。

持続的な成長のために必要なのは タレントを生み出す人事のPDCA

加島 改革を進める上で、特にポイントだとお考えになっていることはありますか。

橋本 当たり前のことですが、改革は一時期だけで終わるものではありません。継続的に取り組み、持続的な成長につながらなければなりません。そのためのタレント人財をいかに早く見つけて、活躍してもらって評価する。そしてそれを起点にして、また次のチャレンジャーを見つけ育てて、アサインしていく、という人事のPDCAをいかに回していけるかが最も重要です。
人事=オペレーションではありません。教育担当、制度設計担当、労務担当といった分業は、効率は非常にいいのですが、もう少しプロアクティブな動き方を目指していきたいと思います。それぞれの担当業務においても、持続的なタレントの創出につながるように、仕事をデザインしていきたいと思っています。
ただ、今、MMCの内部ではいろいろな改革が複数同時進行しています。それに取り組める体力をきちんとキープしながら進めていかなければなりません。

加島 体力とは、社員のモチベーションのことでしょうか。

橋本 そうです。モチベーションをどう維持していくかといっていいでしょう。
今、皆が頑張っていることはよくわかっています。人事としても、早く人を採用したり、早くもっと効率的な仕組みをいれたいと思うのですが、全てに対応することは現実的ではありません。だからこそ、プライオリティ付けが大事です。
プライオリティが高いのは、2年前から少しずつ取り組んできたリーダー教育です。人財を見出した後に、必要な修羅場経験や現場のローテーションといったことは、日産自動車とのアライアンスのメリットも享受しながらやっていきたいと思っています。
改革は、ある程度一気に行い、そのフォローは極めて丁寧にやることが大事です。このバランスをとりながら、進めていきたいと考えています。

 

企業の転換点で 人財開発は何をすべきか

加島 最後に、企業の転換点で人財開発は何をすべきか、ということに関して、改めてお考えを伺えますか。

藤谷 改革というのは従来のものを変えるということですので、通常以上のエネルギーが必要です。我々人事が、普段からエネルギーを持ったリーダー人財を発掘し、把握していること、そういった人財をローテーションや研修を通じて計画的に育成しておくことが大事です。
また改革では、全員を巻き込むことの大切さも感じます。一例ですが、教育改革では、本社が企画して各地区へ展開するのではなく、各地区のメンバーを巻き込み、チーム一体で企画から運営まで責任を持つ体制に変えたことで、教育のクオリティも実施率も上がりました。
また、改革の渦中にいると目の前の課題で頭がいっぱいになることが多いのですが、常に社外の状況をベンチマークして、視野を広く保っておくことも大切だと思います。

上田 私も改革を自分事と捉える人の存在が、企業の転換点を乗り切る鍵だと思います。皆が当事者の一人だという意識を持つきっかけをつくること、例えば「MMC WAY」を題材にして部署や役職も関係なく議論する場をつくっていくことが、人財開発がやるべきことではないでしょうか。

橋本 私は、タレントマネジメントのためにキーポジションの要件をきちんと整備すること、そしてリーダーシップをとれる人財が組織に埋もれてしまわないように、例えば人事諮問委員会やキャリアコーチといった人とポストをつなぐ仕組みをいれること、などだと考えます。
要するに、人財開発がやるべきことは、タレントのパイプラインが充填された状態をつくることです。
このような取り組みは、もっと時間のある、安定した時にやれたらいいのにと思います。ですが、安定している時には、なかなかいい発想やパワーがでてこないものです。苦しいときにこそ、様々なパワーが生まれてくるので、大変でも、今、やり遂げたいと思っています。

加島 改革の最中にもかかわらず、現状を率直にお話いただきまして、ありがとうございました。

 

Interviewer/株式会社セルム 代表取締役社長 加島 禎二
2017.6月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

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