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全日本空輸株式会社 – 将来の姿に向けて人財開発をリデザインする

全日本空輸株式会社
執行役員 人事部長 兼 ANA人財大学長
國分裕之 氏

創立60周年を機にホールディング化をし、「強く生まれ変わる」ための経営改革を推進するANAグループ。
グループが一丸となって行動するための共通言語として新たな経営理念・ビジョンを策定し、行動指針の浸透も進めている。
その人事・人財開発の取り組みについて、ANAグループの戦略実現に向けてグローバル人財の育成を担う全日本空輸株式会社 執行役員 人事部長 兼 ANA人財大学長 國分裕之氏に、お話を伺った。

グループの共通言語として、Wayの浸透を推進

加島 ANAグループ様は、今期から世界のリーディングエアラインブランドの確立という目標を掲げていらっしゃいますが、その戦略と人財開発はどのように進めていらっしゃるのでしょうか。

國分 ANAグループは、創立60周年を機に、「マルチブランド戦略の確立」「グループ経営体制改革」「構造改革によるコスト競争力と財務体質の強化」等の経営改革に取り組んできました。併せてANAグループ全体として目指すものを明確に示すべく、新たなグループ経営理念・経営ビジョンを策定し、CSR方針、グループ行動指針(ANA`s Way)の整理をしてきました。これらは、グループ全体が目指すものを「共通言語」にしたという認識です。
これまでは、グループ各社がそれぞれキャッチフレーズや理念を掲げてきました。いわば縦割りになっていたものを、ANAグループ横断で一体となって同じものを目指す、その拠りどころを作るということが狙いでした。
その中でも大きな取り組みだったのが、グループ行動指針(ANA`s Way)を一年かけて作り上げたことです。

加島 それはどのようなプロセスでまとめていかれたのでしょうか。

國分 経営理念はトップの想いですから、ある意味トップダウンです。行動指針(ANA`s Way)は、実際に行動を起こすのは社員なので、フロントラインを中心に様々な部署の社員から意見を聞くことから始めました。最終的には経営理念と整合性を取りましたが、こちらはボトムアップで作り上げました。
ANA`s Wayの中に、ANAのカルチャーを凝縮させているので、人事部の中に「Way推進」の専門のチームを作って、推進をしているところです。

加島 社員の反応はいかがですか。

國分 トップからのメッセージも出ていますし、人事部も大きく動き出したと認識されることで、会社の本気度が伝わっていると思います。具体的には、課長級以上の管理職には職場でのWayの浸透を業績目標とするよう義務付けました。また、役員と社員双方向のコミュニケーションを強化するため、ダイレクトトークという場をつくっているのですが、上期は「Way」をテーマに対話を行っています。身近に色々と具体的な動きがあることで、「Way」を基点にグループ全体が一丸となろうとしていることは伝わっていると思います。

加島 Wayの中で、特に強いこだわりをお持ちのことはありますか。

 國分 ANA`s Wayには5つの行動指針が示されています。「1.安全」「2.お客様視点」「3.社会への責任」「4.チームスピリット」「5.努力と挑戦」です。中でも、「5.努力と挑戦」が実現できないとANAらしさがなくなってしまう。ANAとしての勢いがなくなってしまうのではないかと思っています。
私の世代は、がむしゃらに頑張って、“追いつけ、追い越せ”を合言葉にしていた時代を経験しています。「ANAは野武士集団」だ、などとも言われていました。しかし、最近はなんとなく「普通」になっているのではないかという危機感があります。しかし今の若手層に、単に“がむしゃらに頑張る”ことを求めても、何について頑張ればいいのかがわからないでしょう。そんな想いもあって、今まで以上に、よりグローバルな視野の獲得に努力と挑戦して欲しいというメッセージを強く出しています。「努力と挑戦」、ここは大事にしていきたい部分だと思っています。

加島 熱い想い、という部分は一番目に見えにくいところですね。どのように可視化して推進していらっしゃったのでしょうか。

國分 そうですね。我々は「まず、行動をおこさないといけない」ということを大事にしてきました。
まず行動し、そのあとにチェックするのです。人事部としては「まず、行動してみる」ことができる機会と環境づくりをします。会社が機会を提供するので、社員には「努力と挑戦をしてください」という推進姿勢をとっています。 例えば、グローバル人財になって欲しいと求めても、そのための努力と挑戦を自分で一から考えていくというのは難しい。英語に関しては、TOEICの点数が一定基準を超えないと次のステップに挑戦できないといったハードルを設けています。また、人財大学のオープンセミナーや、階層別研修にグローバルの要素を入れ込んでいます。

 

目指すのは「国際教養に長けた会社」

國分 実は今、人事部の中では「国際教養を持った人財の育成」を合言葉にしています。
ハードルが高いかもしれないですが、5年、10年後にANAグループは「国際教養力に長けた会社」と言われるようになりたいのです。様々な人財開発の取組み課題がある中、例えばこれから入社する新入社員にはどのような教育を行うのか、今のマネジメント層・中間層はどうするかなど、それぞれの層に対する課題や期待、打ち手が異なる中であっても、セルムさんにもご協力いただき、研修の一部に「教養」の要素を入れています。オープンセミナーや通信教育にも教養分野を充実させています。一朝一夕に身に付くものではありませんが、少しずつでも触れ続けていくことが大事だと思っています。

加島 人材の材の字を財産の「財」の字をあてたり、人財大学という部署名や学長という肩書からある程度想像はさせていただいていたのですが、「国際教養人たれ」という想いが込められていたのですね。
「教養人たれ」ということに重きを置かれたのはどのような理由からでしょうか?


 國分 これまでもグローバル化が重要と言われ続けてきたもののグローバル化はあまり進んでいませんでした。その原因の一つは、そもそもANAにとってのグローバル人財について定義をしっかりしてきていなかったことだったと思います。
改めてANAにとってのグローバル人財を定義すると、①世界とたたかい、②よく知られ、③愛される、人財です。とても簡単な言葉で表現しているのですが、これを実現させていこうとしています。
社内及び海外の方とのディスカッションをしていると、私たち日本人は「自分たちのことをよく知らない」ということを指摘されます。日本のカルチャーを理解していなければ自分たちを説明することもできませんし、海外のカルチャーを理解できません。我々自身もそれを肌で感じています。
英語はコミュニケーションの手段として身に付けながら、それを使えるものにするためには場数を踏む必要があります。場としては国際会議もありますし、研修もありますし、駐在員としての派遣もあります。このように会社としてメニューを用意することはできるのですが、その手前のファンダメンタルとして、教養が大事だと考えたのです。

加島 ANAグループ様は以前から「人としての温かさ」「おもてなしの心」というイメージがありましたが、それに加えて「教養」なのですね。

國分 ホスピタリティは日本人の一番のウリでもありますし、ANAとしてもCSをずっと大切にしてきました。これからも大事にしていく部分です。「世界によく知られ」「愛される」人財ということについては、皆に「仕事以外の用件で海外にメールを打って返事が来るか」という問いかけをしています。海外と仕事のやり取りはできても、個人的なやりとりまでできる社員は残念ながら少ない。しかし、そんな社員は例外なく海外で活躍をしています。ある国でそんなコミュニケーションがとれる人財は、他の国でもできます。そんな人財をもっと増やしていきたいと思っています。

加島 具体的な人財像というところまで行き着いている感じですね。

國分 海外赴任先から戻る際に「また来てくださいね」と言われる人財。これは国内であっても同じですね。ずっと連絡を取り合えたり、旧部署のOB会に呼ばれたりする人財。そんな人財を一人でも多くつくっていかないとグループ力が上がらないと思います。一体感とは、具体的にはそんな人間関係から生まれてくるのではないかと思います。

 

優先順位は「将来、致命的になるかどうか」

加島 「一人でも多く」というお言葉がでていますが、経営の要請の中で、どのように優先順位をつけていらっしゃるのでしょうか。

國分 「今やらないと将来的に致命的なことになる」ことはやる。「やった方がいい」レベルのことはやらないという姿勢でいます。
今一番期待しているのはミドルのトップ層です。次期経営者層で、次の将来を一番担っている層です。経営管理職になる前だからこそ、一からつくっていける時間がある。国際教養や知見を持つとか、こんなことを考えていてほしい、とか自分が経営層になったらこうしたい、といったことを今から考え、今の経営者層に足りない部分や悩んでいるところを補って、5年後、10年後にその層が上がってきたときには、今の課題は解決できるようにしたいです。

加島 今の経営者層に足りない部分と言われましたが、そこは明確になっているのですか。

國分 我々の年代層ですから、やはりグローバル力ですね。これまでの国際業務は一部の社員で回してきましたので、我々の世代は、どうしてもグローバルビジネスの経験が足りない。これから先、一人で現地を切り盛りできるという本当の意味でグローバル力が必要になってくると考えています。

 加島 グローバルビジネスの経験をさせていくためには事業部外への人事異動が必要です。不安や部門の抵抗などはどのようにマネジメントされているのですか。

 國分 昔は部門で優秀な人財を囲い込むということもあったかと思いますが、今は人財の流動化を進めていますし、グローバル人財の必要性についての共通認識も進んでいますので、それほど抵抗を感じません。もちろん、例えば「彼は今動いているプロジェクトのキーマンなので、しばらく動かせない」という場合などもありますが、そんな場合は「しばらく」とは「いつまで」なのかをはっきり明示してもらい、グローバルビジネス経験をしてもらうためのタイミングも考えてもらっています。そのような相談は建設的にできます。

加島 ANAグループ様の中で、グローバル人財が必要だという理解が深まってきているのですね。

 國分 そうですね。しかし、どの企業でも共通の悩みだと思うのですが、優先順位を明確にして取組みたい、と思っていても、様々な事情から結局どれも捨てられない、という結論になるものも多いものです。スピード感を出すためには、もっと人事部として強制力をふるうべきかと迷うこともあります。しかし、それをやってしまうとカルチャーが悪くなってしまうかもしれないとも思います。その点はまだ迷いはあります。
今は、求める人財の将来像に向けてのメニューを揃え、必要性を知らせ、今これに取り組んでおかないと、近い将来、活躍する機会がなくなる、といって社員の背中を押しています。人事としては海外拠点の「経営ができる」人財の確保・育成は急務で、切羽詰まっているといってもよいでしょう。

加島 明確な理念と、ANAグループ様らしい具体的な人財像が、様々な場面で判断基準となり、戦略を推進されていることがよくわかりました。本日はありがとうございました。

Interviewer/株式会社セルム 代表取締役社長 加島禎二
2013.10月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

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