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アマゾン ジャパン株式会社 – 判断や行動の軸となり、アマゾンらしさを創るPrincipleの設計思想と運用

アマゾン ジャパン株式会社
人事ディレクター ジャパンオペレーション
竹村一郎 氏

eコマースにおける世界的大手のアマゾンは、チームをもつマネジャーであるかどうかに関わらず全員がリーダーであるとの考えのもと、すべての行動・判断の軸となる「Our Leadership Principles(以下「OLP」)」をもつ。
これは世界中のアマゾン共通の価値観となっており、同社のカルチャーを形成するベースになっている。
同社のOLPはいかにして作られ、どのように運用され、アマゾンのメンバーの行動に影響しているのか。人事ディレクター ジャパンオペレーションの竹村一郎氏にお話を伺った。

最も大切な想いは、Customer Obsession

加島 今、特に経営のグローバル化を見据えた時、その企業らしさや求心力となる企業理念や人材像への注目が高まっています。多くの企業が理念の見直しや浸透に苦心する中、アマゾン様のOLPを目にし、その内容や言葉遣いに、非常に魂がこもっているといいましょうか、アマゾン様の独自性と本気度を感じました。本日は、このOLPを作られた背景や運用について、お話を伺わせてください。

竹村 私たちアマゾンは、「地球上でもっともお客様を大切にする企業」をミッションとしており、これを譲れない価値観として大事にしています。アマゾンのOLPには14の項目がありますが、その一番始めにCustomer Obsessionが置かれているのはこのためです。
これらのOLPを常に意識し、実践した結果として成果を出すことが大切ですので14番目にDeliver Resultsという項目を置いています。今、申しました通り、1番目と14番目はその順番に意味がありますが、2番目から13番目の項目は書かれている順序に特に意味はありません。

「OLP」にはリーダーという言葉が使われていますが、我々の言うリーダーとはいわゆる「人をマネージする人」ではなく、「主体的に動いて状況を動かす人=リーダー=全員」という意味合いです。これは、我々のカルチャーなので、採用時にも、相当重視しています。

加島 最も大切にされているCustomer Obsessionは、創設者兼CEOのジェフ・ベゾス氏がもっていた信念でしょうか。

竹村 はい。彼が創業時に「成長のためには何が必要か」を考えたものがベースになっています。
Amazon.comはオンラインショッピングサイトなので、まず、お客様がサイトに来ていただいた時に「何でもある」状態であることが必要と考え、「地球上でもっとも豊富な品揃え」を目指しました。何でも欲しいモノがある、という経験(Customer Experience)をしたお客様は、リピーターとなったり友人に紹介いただけたりして、Traffic、つまり来者数が増えていきます。すると今度は出店者(Seller)が増え、さらに品揃え(Selection)が増えるという好循環を作ることができます。その根底にあるのは、顧客満足を掴むことへの執着、つまりCustomer Obsessionで、それを追求し続けていれば、継続して成長することができる、と考えています。この考え方を説明するジェフ・ベゾス本人が書いた図があり、アマゾン社内の様々な場面で目に見えるように使われているため、これも社員全員が知っている内容です。

Our Leadership Principles(Amazon.com, Inc.)

行動や場面が思い浮かぶ言葉で表現

加島 例えば、OLPの中のOwnershipという項目の説明文には、『「それは私の仕事ではありません」とは決して口にしません』という文章があります。ハッとする言葉だと思いました。これは、原文にも、もともとあったのでしょうか。

竹村 はい。原文に忠実に訳してあります。OLPを作るにあたっては、スマートな言葉で表現することよりも、日常において「やりがちだよね」という言動を「そうではなく、こうしよう」と具体的に噛み砕いて表現しています。

加島 いいですね。「誠実に」などの言葉で表現するよりも、行動がイメージできます。
Invent and SimplifyというOLPの項目に「長期間にわたり外部に誤解されうることも受け入れます」という文章がありますが、これはどのような意図なのでしょうか。

竹村 アマゾンはイノベーションの会社と言われますが、そのためには「お客様が今これを求めているからそれに応える」では遅い、という想いからでた言葉です。最終的にお客様に良いと考えれば、今は理解されなくても、そこに向かう。目先のことにとらわれずに長期的に見ていくことが必要だということです。視野を広く持とうということでもあり、OLPの7つ目の項目であるThink Bigに結びつきます。
このようにOLPの各項目は単体で存在しているのではなく、1つの事象がいくつもの項目に絡むのです。全部が連動しているイメージです。

加島 非常に賛同できます。私も目指すことは、本来もっと渾然一体としたものではないか、と思っていました。

竹村 そうだと思います。例えば、ある仕事の効率をあげようとして一生懸命に工夫をしても、それが他部署に負担をかけるものであったとします。実はアマゾン社内では、自分以外は全てCustomerと考えるという共通認識がありますので、これはCustomer Obsessionではない、となりますし、Think Bigでもありません。

特に、日常会話の中で、
判断の軸として使われることが重要

加島 では、その浸透施策についてお聞かせください。

竹村 まずは入社時のオリエンテーションで、時間をかけてレクチャーします。評価項目にも入っていて、OLPにおける自分の言動を振り返るしくみがあり、最低でもパフォーマンスレビューをする半年に一回、評価します。また多くの企業でも既にやっていると思いますが、OLPを常に持ち歩けるように携帯用カードを作ったり、OLPを説明する漫画の冊子を作ったり、その冊子の内容を社内で募集したりしています。キャンペーンを行うこともあります。
ただ、それだけでは頻度が少ない。アマゾンでは、日常の仕事の会話の中で常にOLPの言葉が使われ、フィードバックがあります。これが浸透の秘訣でしょう。
例えば会議で「これは誰がやるか」となった時に「私がやります」とあるメンバーが言えば、会議終了後、上司が「さっきの会議でOwnership発揮したね」というフィードバックを本人に伝えます。逆に「その案は、Customer Obsessionなのだろうか」と伝えるなど、いいことも悪いことも、OLPの項目と結びつけて日常の会話の中で使うのです。業務に関係のない会話の中で使われることもあります。

加島 日常の仕事の中で、判断の軸として社員全員が使われている様子が伝わってきます。

竹村 言葉がきれいに並んでいても、実際の現場の行動に結び付けてイメージできないのであれば、伝わりません。そのことだけを考えてOLP等の言葉を創り、運用すればいいのだと思います

Customer Obsessionから、新しいサービスが生まれる

加島 そしてすべてCustomer Obsessionにつながるのですね。

竹村 カスタマーレビューにネガティブなコメントを入れはじめたのはアマゾンが最初です。それまでは、商品を提供してくれた方に失礼だ、という理由でタブーだったのです。しかし、お客様の購買の助けになるという立場で考えれば、必要な情報なわけです。
また、買い物をする際に、既に買っていたことを忘れて同じ商品を重ねて買ってしまうことが私などはよくあるのですが、ショップサイトで購入ボタンを押す前に、「同じ商品を○月○日に購入しています」という情報が表示され、確認を促すのです。単に売上をあげるためであれば必要ないことですが、お客様の助けになることは導入します。
我々の社風を表す言葉にWork Hard, Have Fun, Make Historyというものがあります。お客様のことを一生懸命考え、実行することが楽しみであり、それが新しい歴史をつくるということを表しています。これも、社内に強く浸透した働き方です。

他国の良さを取り入れ自分流にできるのが
真のグローバル企業

加島 ごく少数だろうとは思いますが、自分を染められるのが嫌だ、という反応はないのでしょうか。

竹村 OLPの中にはこれからでも身に付けられるものと、先天的にもってないと無理なものがあると思います。採用の際には、それを面接などで見ています。OLPは譲れない軸なので、この感覚を共感できない人が働いていくのは難しいでしょう。
ただ、仕事のやり方すべてをアマゾン流でやれといっているわけではありません。特に中途採用でアマゾンに入ってくる方の、過去の経験や他社で培った知識は大切です。過去の経験はリスペクトしています。他社での経験とアマゾンのやり方の両方を知って、より良いもの、新しいものをつくっていってほしいと思っています。
実は私も日本のメーカー出身です。アマゾンは「改善」「5S」「ムダ」といった日本の良き製造業を模範にしていて、日本の製造業をとてもリスペクトしているのです。アマゾンのアメリカの物流拠点を視察に行った際には、その徹底ぶりに驚きました。
また、アマゾンで「Kaizen」はグローバル用語です。Improvementではなくて「Kaizen」というのです。「5S」もそのまま「5S」として使っていますし、「現場」のこともそのまま日本語を使っているのです。書くときは少し英語っぽく「Gemba」と書きますが。

加島 自国主義ではなく、いいところはなんでも取り入れるということですね。

竹村 そうですね。これはいくつかの会社を経験してきた私の個人的な感想ですが、グローバル・カンパニーというのは、非常にオープンな環境があり、自国のいいところ、他の国のいいところ、それを全部取り入れて自分流にしていっている。逆にいえばそれができるのが、グローバル・カンパニーになっているのではないかと思います。

加島 アマゾン様のOLPが、浸透している様子とその秘訣がわかりました。本日はどうもありがとうございました。

Interviewer/株式会社セルム 代表取締役社長 加島禎二
2013.12月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

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