「トヨタらしさ」を譲らずに、
イノベーションを求め続ける

トヨタ自動車株式会社
トヨタインスティテュート 主査 福井 猛 氏
トヨタインスティテュート グループ長 小玉 寿仁 氏

「日本は技術力が高い」「日本の製品は品質がいい」—世界から受けるこうした評価は
日本人にとって誇りであり、心の拠り所でもある。
そしてトヨタ自動車は、日本品質のシンボルの1つと言っても過言ではないだろう。
そのトヨタ自動車は今、将来にわたって持続的成長を続けるために、大胆な体質改善に取り組んでいる。
人材育成はその鍵と位置付けられており、これをリードする組織がトヨタインスティテュートである。
様々な試みが進行しているが、そこには「譲れないものがある」という。
その舵とりを担う福井氏、小玉氏の三方に、
一連の取り組みの内容と課題、今後の方向性について、お話を伺った。

なぜ今なのか

 加島 まず、今回の人材育成の見直しに着手した背景をお教えいただけますか。

 福井 歴史を振り返りながらご説明したいと思います。トヨタグループの創始者である豊田佐吉の考えをまとめた「豊田綱領」の中に「産業報国」という言葉があります。産業を通じて国の発展に報いよう、という意味です。そのため、トヨタは80年代半ばから、海外進出をしていますが、今思えばそれは、積極的な戦略というより、外部環境にあわせて海外にでていったという意味合いが強かったと思います。

(主査  福井 猛 氏)

(主査  福井 猛 氏)

 業務の進め方にしても、組織運営にしても、日本で行っているオペレーションを、海外でも忠実に再現する、というところに力点を置いていました。マネジメント体制でも、現法のトップは日本人で、ナンバー2~4の位置はローカルの人材が担当していましたが、彼らの脇には日本人がついていて、日本本社とのつなぎをする、というのが基本的なあり方だったのです。
 ご存知の通り、北米で2009年~2010年にかけて大規模リコールにつながった品質問題が起こり、これまでのやり方では本当の意味でのグローバル企業にはなれないと考え、これが大きく舵を切る転換点になりました。
 人の面では、当時現法のトップは、過半数以上が日本人だったのですが、
2拠点を除いた全てをローカル人材に変更することにしました。

加島 意思決定の仕組みに課題があったということなのですか。

福井 かなり細かいことまで日本本社にお伺いをたてないと物事が進んでいかない状況だったということは、少なからずあったと思います。
 当時のトヨタの基本戦略を示す「グローバルマスタープラン」は、商品ごとの販売・生産台数を記した計画です。もともとは社員や関連メーカーに大まかな計画を提示するものでしたが、次第にそれが必達目標のようになってしまっていました。販売台数の拡大対応に追われ、規模拡大のスピードに人材育成が追い付かない状況に陥っていたと思います。
 また、意思決定が必要な事項は基本的に日本で決定していました。しかし、時差によるコミュニケーションのやりにくさなども手伝って、現地、現場の実感や肌感覚のようなものが日本サイドに伝わりにくい環境にありました。もちろん、現地の意思決定はより現地の人に任せていくべきだ、という話はそれ以前からありました。ですが、「とはいっても、任せられる人材はいるのか」「本社のやり方も理解している必要がある」といった理由でなかなか進んでいなかったのです。

【50%】トヨタグローハルビジョン
 前述した品質問題に対する信頼回復の必要性と、リーマンショックによる赤字転落をきっかけに、今までのやり方を見直し、今後のトヨタの目指す企業像や価値観を明文化した、「トヨタ グローバルビジョン」ができたのが2011年です
(図1)。

 「トヨタ グローバルビジョン」は、12のビジョンセンテンスで構成されており、社会に提供する価値や経営方針、マネジメント方針や社員としての心構えなどがこの中に込められています。世界の各拠点が「地域主体」で事業活動を行う際の拠り所となる考え方を示しています。
 2011年から、トヨタはCMなどで「ReBORN」という言葉を使っていますが、その言葉通り、経営体制をはじめトヨタの様々な部分を見直し、持続的成長が可能な企業体質へ生まれ変わろうとしています。

Interviewer/株式会社セルム  代表取締役社長 加島禎二  取締役 松村卓人
2015.5月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

人財育成の「ReBORN」を進める

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