大胆な「革命型」グローバル化を実行
リーダー人材の早期選抜・育成と市場競争力がある
人材の育成によって真のグローバル企業を目指す

日本板硝子株式会社
執行役員 グループファンクションHRダイレクター アジア
梯慶太 氏

ドメスティック企業であった日本板硝子(NSG)が、世界展開で先行していたイギリスのピルキントン社を買収したのは2006年。「小が大をのむ買収」と話題をさらい、今では世界最大規模のメーカーとなった。
グローバル市場で勝ち残るために自らドラスティックな変革を起こしたNSGは、人材開発に関しても真のグローバル化を目指し着実に改革を進めている。執行役員でアジア全域におけるHRトップである梯慶太氏に、その取り組みや人材開発に対する考えについて伺った。

加藤:現在、多くの企業がグローバル化に向かっていますが、NSGは2006年から真のグローバル化を目指して大きく舵を切りました。全ての日本企業が出来る方法ではないと思いますが、学ぶべきことが多くあると思います。

梯:確かに、我々が成し得たことを踏まえて様々な議論が交わされてきましたね。我々のグローバル化は革命型で、時間はかかりませんでしたが、グローバル組織に急に取り込まれた日本人にとっては痛みが伴うものでした。また、多くの日本企業が行っている進化型のグローバル化のように日本人を海外に大量に送り込む必要がなくなったのも特徴です。とはいえ、日本人からもCEO候補者を継続的に出していきたいと考えているので、日本独自のタレントマネージメントは必要だと思い、仕組みを準備しています。

加藤:買収の前と後では、売上比率の変化はもちろん、組織的にも大きな変化があったのではないでしょうか。

梯:買収前は、売上も従業員数もNSGはピルキントン社の約1/2でした。それが買収直後は、連結売上高が約8,700億円、従業員は29,300人と、規模が急拡大しました。製造拠点は世界29カ国に、販売先は130カ国以上に及んでいます。最も大きな変化は、海外売上比率が2割から7割に拡大したことです。
組織的には、1年間かけてどう統合していくかを考え、まず重複する事業を統合しました。2008年6月にはスチュアート・チェンバースが社長兼CEOに就任すると同時に委員会設置会社に移行。その後も若干の変遷があり、2012年2月に組織を再編、さらに4月にクレイグ・ネイラーに代わって吉川恵治が代表執行役社長兼CEOの役職に就任しました。組織面での大きな変化は、買収して約1年でフラットグラス事業を統合し、これまで日本人だけで運営していた事業部のヘッドが全て外国人になったことです。

「全社員駐在員化」は大きなプラス

加藤:かなり思い切った変革ですね。日本の会社というイメージを持って入社した人の中には、なかなかシフト出来ない人もいたのではないでしょうか。その対応にも苦労されたと思われます。

梯:そうですね。セルムさんには2007年頃から手伝って頂き、その一つとしてシニアマネージメントワークショップ(以下、「SMW」)を実施しました。これまでグローバルな業務に携わった経験のない50歳前後の社員に対して、グローバルで働くことについて理解してもらうことが目的でしたが、定年までの約10年でどこまで自分が成長出来るか、何を目指すべきなのか、彼ら自身も分からず不安に思っていたでしょう。2008年にチェンバースが社長になる直前、820人のミドルマネージャーを対象に、「グローバル企業では皆さんにはこうしてもらう」とはっきり説明したのは組織全体に大きな影響を及ぼしたと思います。
現在、日本人は世界全体の社員の17%で、NSGはもはや日本人の会社とは言えません。人事政策も日本人だけを見て決められず、多様な人材に対してどうしていくかが重要になってきます。共通言語は英語で、経営理念やイントラネット、各地にあるコールセンターも多言語化しています。社内報は19カ国語で作成していますが、こうしたことは2006年以前には考えられなかったことです。グローバル企業ではコミュニケーションが非常に大事だということの具体的な現れの1つです。

加藤:一挙にここまで変わるとは、ものすごいスピードですね。

梯:現在のNSGの状況は、以前であれば海外駐在員でないと経験出来なかった経験を、全員が経験出来るようになったとも言えるでしょう。言わば全社員駐在員化で、考えようによるとこれはグローバルリーダーへの育成という点でも個人の成長という点でも大きなプラスです。

Interviewer/株式会社セルム 取締役 加藤友希
2012.6月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

変革時にはシンプルなメッセージを繰り返し伝えることが大事

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