企業が変わる時、
人財開発は何をすべきか

株式会社日立総合経営研修所
代表取締役 取締役社長
山田哲也 氏

厳しさばかりがめだつ日本の電機業界の中にあって、V字ともいえる業績の回復をみせる日立グループ。その要因の一つに、経営戦略への実現と人財開発を連動させた経営スタイルがある。日立らしさを残しながら、いかにグローバル競争を勝ち抜いていこうとしているのか。日立グループの経営人財の育成を担う日立総合経営研修所 代表取締役 取締役社長 山田哲也氏に、お話を伺った。

ビジネスの課題を踏まえ、それぞれの人事施策の連携が必要

加島:日立様は日本企業が本気でグローバル化しようとする、その先兵としていち早く舵を切り、突き進み始めた印象があります。人財開発の面では、どのように取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

山田:世間では日立の業績回復が早いと評価していただいていますが、弊社の幹部はまったくそう思っていません。これは出血を止めたに過ぎないという認識です。グローバルでのメジャープレーヤーになることが日立グループの目標であり、今はそのスタートを切ったところです。昨年度の営業利益率は4.3%でしたが、これを2桁に近いものにし、GEやIBMなどに負けない体質にもっていかないと、グローバルでは勝てません。これがまずビジネスの大きな課題です。
人財の課題の前に、まずはビジネスの課題があります。“その課題を成し遂げるため”のアプローチの1つとして人財の課題があります。
日立でもモノを納めるビジネスから、ソリューションの提供や、アフターサービス等、業務の幅が広がり、事業の枠組みが変わってきています。例えば、イギリスの高速鉄道を受注した際には、鉄道車輌などのモノのことだけではなく、顧客にファイナンスのスキームを組んだり、車輌を納めた後の保守・メンテナンス等も請負っています。そして、このような新しい領域に関わる、これまでとは異なった人財が求められてきます。

加島:求められる人財とは、どのような人財でしょうか。

山田:求める人財は、これまでと異なる仕事の進め方ができるリーダーです。そのリーダーの要件は、3つあります。1つ目は、ビジョンを示してチームを牽引できる人財です。例えば、昨年比○%アップだからいいだろう、という積み上げ的な考え方ではダメです。日立が戦っている競争相手は何をやっているのか、現時点でどのくらいの差があるのかを考え、未来から現在を振り返る視点で「こうなりたいから、こうしよう」というビジョンを示し、チームを率いていく人財です。
2つ目は、多様性を束ねる力を持った人財です。これからは、日本人だけで全てを遂行できる状況ではありません。現地の人財など、多様な人財を率いていくことがリーダーに欠かせない要件となっています。
3つ目は、最終顧客の視点を持った人財です。目の前にいる直接顧客への対応だけではなく、その先にいるお客様が必要なサービスを提案していくことが求められています。簡単なことではありませんが、この3つの要件を備えたリーダーを育成していかないと、生き残ってはいけません。
そのための新しいプログラムも必要ですし、開発しています。もちろん育成だけでなく、必要な人財を採用する、リテンション施策を準備するといった取組みも必要です。公平感のある評価や登用の仕組みを整備することも条件です。人財を抜擢した後にはタフアサインメントも必要でしょうし、その際には並行してOff-JTプログラムも必要になります。

加島:会社全体が連動し、整合性をもった変化を起こさないと、グローバルのメジャープレーヤーになっていけないということですね。

山田:そうです。しかし変化といってもこれまで培ってきた日立的なもの、日本的な良さを捨ててしまっていいのかというと、そうではありません。品質を厳しくチェックする、お客様の要望やクレームに対して真摯に対応する、といった日本の良さや日立のコアバリューは、大切にしなければいけません。その一方で、グローバルな価値観やルールを取り込んでいくことは、今後の絶対条件です。
ですから我々を含め人財部門の役割は、その両方を理解し、うまくハイブリットして会社の中に浸透させることだと思っています。

Interviewer/株式会社セルム代表取締役 加島禎二
2013.1月取材
※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

ラインも、人事もチェンジマネジメント

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