アセスメントは能力開発の入り口 正しい理解が正しい成長への第一歩

下津浦 正則

弊社は年間約500社、2万人から2.5万人のリーダー人材のアセスメントを行なっています。

企業がアセスメント・サービスを採用する目的は、「選抜」と「能力開発」の2つに分類できます。「選抜」とは、例えば、管理職任用、役員任用の可否を決定する際の判断材料のひとつとしてアセスメントを活用する、ということです。企業規模が大きくなればなるほど、候補者の能力レベルを全社横串で評価できる人がいないことが多く、そのため同じ尺度で評価する、いわゆる横串として第三者の目を入れるニーズが出てきます。一方、「能力開発」とは、個々人あるいは組織全体の強みと弱みを明らかにして、中長期的な人材育成に反映していこうというものです。

最近では、「能力開発」目的に対するニーズが高まっています。背景には、将来的な労働人口の減少が挙げられます。今後良い人材の採用はますます難しくなり、現在在籍する社員の能力をどう伸ばしていくか、が組織の大きなテーマになるからです。「能力開発」目的の場合の対象者は多種多様です。30代のプール(選抜)人材の場合もあれば、エグゼクティブ層を対象とするケースもあります。

アセスメントの基本構造は、「選抜」の場合でも「能力開発」の場合でも『複数の演習を通して、対象者の行動を幅広く引き出し、それらを設定したディメンジョン(評価項目)に照らして、複数のアセッサーが多面的に評価する』というものですが、実際のアセスメントの場面(研修)では、単にアセッサーが評価をするだけではなく、受講者が演習場面を自ら振り返り、また、参加者同士で相互にフィードバックを行なう等、啓発効果を高めるように設計する場合も多くあります。

ミシガン大学のロバート・カッツ教授が提唱したリーダーに求められる3つのスキル、「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」「テクニカルスキル」の内、アセスメントでは、主に「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」を対象にします。「ヒューマンスキル」では、例えば「問題を抱えた部下との面談」という演習を通して、「感受性」「柔軟性」などを評価します。また、「集団での問題解決」という演習を通して、「影響力」「説得力」などを評価します。「コンセプチュアルスキル」では、例えば、「インバスケット演習」を通して、「分析力」「判断力」「決断力」などを評価します。

「選抜」「能力開発」、いずれの目的の場合でも、アセスメントが十分に機能するためには、

・目標となる職務を遂行するた めの発揮行動を定義づけること (ディメンジョンの設定)
・目標となる職務行動と近い状 態を演習課題とすること
・アセッサーの行動解釈力が十分  であること

という3つのポイントが必要です。また、アセスメント結果を行動変容に結びつけるためには、効果的に「経験学習」に結びつけることが重要です。能力開発の手段の内、経験を通した能力開発がもっとも大きな比重を占めるからです。

アセスメントは能力開発のゲートウェイ(入り口)といえます。目指す姿を設定しても、現在地がわからないとゴールに向けた道筋は描けません。これからの時代、その現在地を確認するアセスメントは大きな役割を果たすと考えます。

(2015.1月 取材)

下津浦 正則(しもつうら まさのり)

マネジメントサービスセンター チーフコンサルタント。一橋大学卒業。日産自動車にて人事実務を担当した後、タワーズペリン(現タワーズワトソン)入社、日系及び外資企業の人事制度報酬コンサルティングに従事。現在、人事・人材開発関連のコンサルティング及びマネジメントからエグゼクティブに至る人材アセスメントを多数手がけている。

最近著
『育成型人事制度のすすめ』(東洋経済新報社、2011年)

バブル崩壊後、多くの日本企業が採用した成果主義人事制度は、必ずしもうまくいっているとはいえない。また、これからの人事制度を考えるとき、大前提となるのは企業のグローバル化である。「これからの人事制度はどうあるべきなのか」その方向性を示す一冊。