グローバル市場で勝ち残るリーダーシップを醸成せよ

三谷 宏幸

企業にとってグローバル化とは、世界の市場という、より大きな市場で、世界と同じルールで戦っていくことだと思う。
そうした中で日本企業がグローバル企業に比べて劣っているところは、まずは「会話力」だ。言葉が上手く通じ合わないことがハンディになるのは当然だろう。そのためには、まずは相手の国の人達の文化の背景や考え方を理解することが肝要だ。加えて、日本企業には「戦略性」と変化への「対応力」が見劣りしているというのが実感である。

そもそも「戦略」と「戦術」は全く別のものだ。物事を固有名詞的視点で個別に捉え、「変えなければならないのは5つあるうちの1つだけだから、それだけを直せばいい」とやるのが「戦術」である。そうしたやり方では、せいぜい企業の進化は今までの延長線上で「0.5」だけ前進するのが限界だ。一方「戦略」とは、虚心坦懐に考え方を組み直すことである。その際には伝統だったり、これまでの経緯だったり、働いている人の心情だったりは、大事でないとは言わないが、あとで考えるべきことだ。今までの枠を超えて変わろうとした時は、物事を否定することが必要なのに、すべてを肯定したまま何かを取ってつけることだけではグローバルでは勝っていけない。

一方でグローバル化への対応とは、今までやってきたことを全て捨てることではない。私は過去のやり方の7–8割は通用すると思っている。
今までの良さは使えるのだ。使えるのだが、根本から組み直しをしなければならない。
しかしながら何かを恐れ、目先だけを変える“小手先”の対応だと、新しく取り込まなければならない価値観を、企業に取り入れることはできない。
これは日本企業でリーダーシップをとる人間が、これまでのやり方の利益代表者として選出されてくる仕組みに由来している。ここに人事の課題がある。変化を起こすつもりのない人間がリーダーのポジションにいる限り、その組織が変わるのは無理だ。改革できる人材にリーダーシップを取らせることが必要だ。そうした変化を達成するためには、次のタレントが育っていることが前提条件となる。

現在の状況をガラッと変えるような変革や戦略性は、トップにダイレクトレポートする第一層にいる“過去”の人材では難しいだろう。第二、第三層の若い人材の中から育てていく必要がある。私の経験では40代から登用することすら困難だと感じることがあった。育てていくべき人材は、組織の枠を超えるくらい尖った人材。例えばもの凄くエネルギッシュであるとか、負けず嫌いである、といった人材だ。選ばれた人材には様々な経験をさせるべきだが、失敗しても選ばれた時のエリートのまま傷つかない、という状態は異様だ。選ばれた人材は選ばれたことに応えるために常に必死の努力をしていく、こうしたタレントのパイプラインの育成も必要となる。

私は「会社は人がつくっている」と考えている。人材が育ってくると、その会社も育つ。実際グローバル企業では、経営者の最重要課題の1つが人材育成と後継者育成であると考えられている。人材開発は、それだけの使命をもって推進しなければならないことなのだ。そしてそれは人事部の仕事ではなく、経営者の最大のミッションなのである。

(2015.1月 取材)

三谷 宏幸(みたに ひろゆき)

オフィス三谷代表。東京大学工学系研究科非常勤講師。東京大学機械工学科卒業。川崎製鉄(現:JFEスチール)に入社後、カリフォルニア大学バークレー校大学院工学修士。スタンフォード大学大学院経営工学修士を取得。ボストンコンサルティングを経て、日本ゼネラル・エレクトリック企画開発部長。GE航空機エンジン北アジア地域社長。GE横河メディカルシステム代表取締役社長。ノバルティスファーマ代表取締役社長。ベネッセホールディングス取締役を歴任。

最近著
『世界で通用するリーダーシップ』(東洋経済新報社、2012年)

早くからグローバルキャリアを志した著者が、世界に通用するリーダーシップのあり方をビジネスリーダー予備軍にアドバイスする。