グローバル化する組織こそ「人間的なつながり」が必要

小杉 俊哉

日本企業は、かつては人間味あふれる組織でした。仕事では厳しい上司が、社内運動会ではしゃぐ姿を見て意外な一面を発見するなど、人を多面的に捉えられる場がありました。

ところが成果主義を追求した結果、その人間味の部分が削られてしまいました。ジョブディスクリプションの明確化やコンピテンシーの規定などにより、各人の役割はハッキリしましたが、自分の成果とならない余計なことはやらなくなってしまったのです。管理職もプレイングマネジャーとなり、やはり自分のことで手一杯。部下をきめ細かくみていられなくなり、人間的なつながりが希薄になってしまいました。

そのため日本では「成果主義を導入すると職場が殺伐とする」と思われていますが、実はグローバルトップ企業では、成果を厳しく評価すると同時に、休日に上司の家でガーデンパーティをしたり、オフサイトミーティングを行ったりして個人的且つ人間的な部分で知り合う機会を非常に多くもっています。業績優秀者への表彰式も盛大で、モチベーションアップにつなげてもいます。それにより、「一体感」や「誇り」も醸成されるのです。ある程度時間も費用も必要なことですが、これは業績をあげるために必要な「チームビルディングの投資」として、多大なエネルギーを注いでいます。そんな企業が成功しているのです。
それなのに、日本は表面だけの成果主義を導入してしまいました。仕事の帰りに飲みに行く機会は激減しましたし、「オンとオフは分けるのがいい」という風潮が強くなり、休日の付き合いなども一度誘って断られたらもう誘わない、ということが起こっています。しかし、たまたま都合が悪かっただけで、本音ではたまには誘ってほしいと相手も思っているのかもしれません。

私は組織に「人間味」を取り戻すことが必要で、それがグローバル化にあたっても大切だと考えています。
これは、単純にかつての日本的経営への回帰ではありません。一人ひとりが自律した対等な関係性をもち、お互いにお互いを信頼し、支援する関係があって実現されるものです。
「人間味」をもった組織にはメンバー同士の信頼感があります。メンバー同士の信頼感のある組織は柔軟です。柔軟性のある組織は創造的に動くことができます。新しい価値創造ができるのはそんな組織です。
既に「正解」があり、出来上がったサービスや方法を移植して成功するビジネスであれば、カリスマ的な強いリーダーシップで率いていくことが効率的かもしませんが、既に国内・国外を問わず多くの企業は、それぞれの地域や事業の独自性に対応した自律的なビジネスを目指しています。そのため、求められるリーダー像もカリスマ型から、それぞれの特徴や強みを発揮してもらい、それをつなぎ合わせることができる支援型リーダーに変わっています。それは、システムだけでつくられるものではありません。制度変更や役割定義の問題にすり替えてしまってはならないのです。

企業は組織を人間味のある「血の通った場」にする努力をもっとして、一人ひとりが力を発揮できるような環境づくりをする必要があるでしょう。そのことが、新たな価値創造につながります。そしてそれが、真のグローバル企業となる近道だと思います。

(2014.5月 取材)

小杉 俊哉(こすぎ としや)

慶應義塾大学SFC研究所上席所員。合同会社THS経営組織研究所代表社員。NECを経て、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ユニデン人事総務部長、アップルコンピュータ人事総務本部長を歴任後独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て、現職。

最近著
『 リーダーシップ3.0~カリスマから支援者へ 』(祥伝社、2013年)

必要とされるリーダー像は、時代によって変化する。中央集権型のリーダーシップ1.0、変革型のリーダーシップ2.0を経て、今、必要なのは支援型のリーダーシップ3.0だ。本書では、グローバル時代にも通用するこの3.0型のリーダーの特徴や条件を明らかにする。