イノベーションを起こすもの

児玉 教仁

イノベーションを起こすために必要なもの-それは発案者の“想い”をコアにしたリーダーシップと、正しいディシジョンメイキングができる経営層だろうと思います。
今、日本ではイノベーションを生み出すべく苦しんでいる企業が多いですが、日本にだってアイディアマンはいます。しかしアイディアと同等か、それ以上にリーダーシップが大事です。今までとは異なることをやろうとする時、有形無形の抵抗があるのは当然です。「そんな面倒なことはやめておけ」「周りは迷惑なだけだ」と言われることもあります。イノベーションの成否を左右するのは、それをどう乗り越えていくかというリーダーシップだと思います。

基礎研究の研究者などは別だと思いますが、基本的にアイディアの発想者とそれを具現化するリーダーシップを発揮する人材は、同じであるべきだと思います。アイディアもあり、リーダーシップもあってイノベーションを実現していく、というと非常に稀な才能のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。何かを強く想い、実現に向けて行動すれば、それがイノベーションのリーダーシップです。
想いとは、「これで世の中をよりよくしたい」とか「困っている人の助けになりたい」といった利他的なものでも、「理由はないけど絶対やりたい」とか「これでA社に勝ちたい」というものでもいいのです。それが、その人の言動に宿る魂となり、人を感化し、巻き込んでいくのです。想いを持つ人材がリーダーシップも持つはずです。イノベーションを起こす人材開発のポイントは、想いの強化ではないでしょうか。

同時に、経営陣はメンバー以上に重要なイノベーションの鍵を握っています。新しいプランを評価し、リソースを振り分けるのは経営陣なのですから。この判断は論理思考力だけでは難しく、妥当な“肌感覚”が大切になってきます。経営陣ともなると年齢が高い場合が多いですが、年齢を理由に「新しいことはよくわからない」で済ますことはできません。経営陣が正しくディシジョンメイキングするために絶対的に必要な感覚だと考えます。
“肌感覚”を養うのは、やはり経験です。例えば私が設計を始めている研修の1つですが、経営者や部長層に対してFacebookのアプリを作らせるということをイノベーションマインド研修としてやったらどうでしょうか。当然、技術的な作成は別の人がやるのですが、受講者はマーケティングや発想法などの座学を経て、自らリサーチ、マーケティングしてFacebookで「いいね!」を1万以上とるアプリの案を企画し、実際にFacebookに公開してユーザーに直に評価してもらうのです。もちろん最初は失敗するでしょう。しかし失敗原因の分析をし、2~3回繰り返せばイノベーションを判断するうえで必要な“肌感覚”が身につくと考えます。

そして最後にものをいうのは、人の懐に飛び込んでいく勇気ではないでしょうか。成功したプロジェクトでも、もうダメだ、と思う場面があり、「社長がやると言ってくれた」「○○さんが庇ってくれた」というエピソードがプロジェクトを救ったという話が無数にあります。最後の最後は、心を開き相手の懐に飛び込む勇気、或いは飛び込ませる人間力がものをいうのだと思います。

(2013.5月 取材)

児玉 教仁(こだま のりひと)

グローバルアストロラインズ代表取締役社長。三菱商事にて多くの国際プロジェクトに従事した後、企業派遣によってハーバード大学MBA取得。帰任後は日米に拠点を持つIT会社、イノベーションキッチンを立ち上げCEOに就任。2011年に独立し、現職。「感動」を切り口にした学習方法を構築し、「実戦力となる骨太なグローバル人材」の育成を目指している。また、日本のFacebook史上、最多のユーザー数を誇る『自分新聞』を運営中。

最近著
『ハーバード流宴会術』(大和書房、2012年)

宴会を、参加者同士が「新しい信頼関係を築く」運命の場ととらえ、リーダーとして宴会を盛り上げる心構えと、超具体的な48の指針を紹介する。