その戦略実現のために、どんな行動が必要か

川野 正裕

今、早急に未来を創るための動きに着手すべき、という課題認識はその通りだと思います。多くの企業のHR部門でも見直しを始める動きがありますが、その際に大切にすべきことは、人を活かしきる状況をつくることです。
人を活かしきる状況をつくる、とは、その組織独自の「編制原理」―自社の戦略実現のために必要な人の動きや働き(業務プロセスとケイパビリティの組み合わせ)を認識することと同義です。自社として人をどう動かして業績をあげていくのか、或いは未来を創っていくのか。この議論なしに、いきなり人事戦略を考えることなどできないはずです。
例えば、個人の能力が業績に大きく影響する業務であれば、個人に着目すべきでしょう。集団でカバーし合うことで成り立つ業務であれば、個人としての課題解決能力や卓越性より、周囲と協働することを大事にすべきです。業務によって異なるものを全社一律で考えてしまっている企業が結構あり「一体何をやっているのかな?」と思ってしまうこともあります。

マネジャーのタイプも複数あってOKだと思います。ビジョンや戦略を描くことに長けた人もいれば、それを正しく理解して実行することに長けた人もいます。現実的には、例えば5人のマネジャーがいたらそのうちの一人が戦略や戦術を考え出し、部長が「これは良いから真似をしろ」と他の4人に指示をする。これでいいのです。5人が5人とも戦略を考え始めたら、部門として収集がつかなくて困ります。また、求められるマネジャー像として示される能力が、もし1人でできたらスーパーマンのような人でしょう。複数の人間で求める人材像が達成できればいいのではないでしょうか。そもそも、優れたリーダーは偶然に生まれることが多いのが現実です。これはその時、その状況の中で一番フィットした能力をもった人がその役割を果たしたということだと思います。こう考えると、むしろ複数のタイプの人材を活かす必要があります。

しかし、新たなビジョンや戦略を理解できず、或いは理解しようとせずに、昔のままのやり方でいる人、或いは反発してくるマネジャーは論外です。彼らは「役に立たないマネジャー」です。では、この問題に対してはどうするのか。私は、基本に戻るという部分を教育し直すところから、話を始めるのがよいと思っています。
基本とは、①自分の意見としてモノゴトを決めて、責任をもって発信すること。普段と異なることは組織の上位の人が決める事、と思っている人が多いと思います。マネジャーが決めていかないと現場が止まってしまいます。②根拠のある公正な評価を行い、説明責任を果たすこと。特に海外では、これが原因で暴動になることもあります。③ローコンテクストなコミュニケーションができること。阿吽の呼吸の対極にあるコミュニケーション、価値観が異なる相手に対する説明責任のことです。

これらは皆、海外拠点で働く日本人マネジャーに対して多く指摘されている課題ですが、そもそもマネジメントの基本です。海外で求められることと今の日本において必要とされることは、限りなく一致してきています。基本をしっかり押さえていないと、海外どころか、日本でも通用しない、そんな状況を全員が前提として認識するところから始めることが必要だと思います。

(2013.8月 取材)

川野 正裕(かわの まさひろ)

グローバルベイシスコンサルティング合同会社 代表社員。東北大学大学院工学研究科修士課程修了。
リクルートの研修事業にてトレーニングプログラム開発責任者、事業企画マネジャーなどを歴任。また、大手CVS,家電量販店のサービスマネジメントコンサルティングに従事。ヘイコンサルティングでは、新規事業として教育研修事業を立ち上げ、日本における中核事業に成長させる。後に、アジア統括ダイレクターとして同事業をアジア10か国で事業展開。2008年8月よりエーオンコンサルティング(現エーオンヒューイット)に参画し、日本事業を立ち上げると共に、風土改革、マネジメント開発、評価制度の運用適正化に従事。2011年4月、グローバルベイシスコンサルティングを設立し現在に至る。
韓国や中国における研修・講演の経験も豊富。