グローバル化に向き合うHRの役割

糸木 公広

  「グローバル化」と「ローカル化」。この2つは似ているようでいて、現場から見るとずいぶんと違います。 

 「グローバル化」の大きな要素の一つは、サービス、商品、スキームなどを世界共通化し、効率化を図ることです。
一方、現場では現地のニーズや状況に合わせ、現地最適化、すなわち「ローカル化」をしています。この二つの最終目的は同じながら、現実局面では相入れない場合もあります。各国には独自の文化や習慣やニーズがありその集合が世界なのですからまずは一つひとつの現地を知り尊重することから始まるべきでしょう。まずは現地最適化を尊重しつつ、共通化・統一化とのバランスをとっていくことが大切だと思います。 

 「ローカル化」には現地人材の活用という意味もありますが 十分教育したローカル人材に現地拠点での要職が開かれているということもグローバル化には欠かせません。この時に重要なことは本社側の準備状況~現地事情の理解、現地人との信頼関係の構築~です。これが整わないまま、現地に権限を委譲してしまうと、本社の目と手が十分届かない組織、いわば現地の「王国」が出来てしまう可能性もあります。そのため『本社自身のグローバル化』も求められます。

 こうしたことに備えるには次の3点が重要と思います。
①赴任者の現地理解・関係構築支援
 赴任者は短い期間に様々な仕事をしなければなりませんが、着任後はまず、「現地理解と関係構築」に時間をかけることが本来であり、それがその後の仕事を格段に効率化します。しかし、送り出し元からは早く成果を出すことを強調されることが常です。着任後はまず現地の状況を把握し、関係を築くことに時間を割く、という認識を社内全体でシェアされるべきでしょう。
②本社が現地事情と人材に通じていること
 本社でも現場の実状を知る機会をもつと共に、部門の人材の派遣計画を持つことが大切ではないでしょうか。全社の現地理解を促進させ、グローバル化とローカル化が最適化しあってくるはずです。特にローカル人材の活用を進めるうえでは、本社側が相手の事や状況を良く知って、可視化しあい、相互信頼を持ちながら進めることが肝要です。
③「違い」にオープンな環境
 「違い」には誰しも抵抗感や戸惑いを感じますが、それぞれに理由や背景があります。極力オープンな姿勢で違いをまず迎え入れ、取り込み検証するというところから世界へ踏み出すグローバル化は始まると思います。日本国内でもそんな環境を作っていくことが大切です。この事は、本社内での多様性やイノベーティブな風土創りにも役立つと思うのです。

  このような課題はすべて人の認識と姿勢に関わる話です。赴任者本人や複数の部門がある現地拠点、また単に一事業の担当部門だけでは幅広く展開するのは難しいでしょう。人の育成の元締たるHRこそ、このリーダーシップをとるのにふさわしいと思います。また、赴任者がHRは味方だと思ってくれるような関係を作ることができれば、現地からの情報の流れが太くなるでしょうし、より理解も高まります。経営課題のグローバル化の意義を理解し、現地のローカル化の志を鼓舞し、赴任者、送り出し元、現地組織と密につながり合える、HRはそんな役割を演じてもらいたいと思います。

(2014.1月 取材)

糸木 公広(いとき きみひろ)

シンクグローブ・コンサルティング代表。
東芝を経て入社したソニーで、20年にわたり9カ国に海外赴任。販売会社社長(3カ国)、欧州本社マネジメントなどを歴任し、現地法人の設立・経営、工場経営、合弁・工場閉鎖などを経験。最後の2カ国、ベトナムと韓国では本社より社長賞(優秀業績賞)。2012年に独立し、現職。現場の視点に立脚したコンサルティング・研修を行っている。

最近著
『日本人が海外で最高の仕事をする方法』(英知出版、2013年)

先進国も途上国も、新ビジネスも工場閉鎖も、現場も社長も経験した著者が七転八倒のストーリーで語る、多様な世界=これからの時代を生き抜くための「確かな指針」となる一冊。